「さて、そろそろ本気の周回かな」
「お姉ちゃんの出番ですねっ!? 任せてください!」
「ふむ。しばらく呼ばれていなかったからな。良い、許す。私の力を使うと良い」
このくそ寒い千歳に召喚された薄着の
二人を連れて向かうはフードコート。明らかに戦う場所ではないだろうと思わなくもないが、そこに目当てのブツを落とす敵がいるのだから仕方ない。
「さてさて、お姉ちゃんが宝具で敵を吹っ飛ばしてくれるから、スカサハ様は援護を。そうすればサクッと終わるはず」
「了解です! お姉ちゃんパワーを見せつけちゃいますよぅ!」
「ふむ。まぁ、いつも通りということか。たまには高難易度とやらにも行ってみたいのだが……」
「それはまた今度です。まぁ、そのうちですね」
「あぁ、待っているとしよう」
そう言って、三人はフードコートにいる鬼達を倒しに向かうのだった。
* * *
「ホットドッグ一つ」
「「焼きそば二つ!」」
「フランクフルトで」
「バーガーって売ってるかしら?」
「茶々はカレーで!」
「順番にやっていくから少し待ってくれ。まずはホットドッグからだ」
エウリュアレ達の注文を聞きつつ、手早く作ったホットドッグを差し出すエミヤ。
その後ろではキャットが焼きそばを作りつつカレーをよそっていく。
「お先にカレーなのだナ! 焼きそばはしばし待て。めちゃめちゃうまい焼きそばを出してやる」
「あぁ、任せた。よし。フランクフルトも出来た。受け取りたまえ」
「やっほー! カレーだぁ!」
「ありがとうございます。というか、アビーさん、バーガー食べれるんですか? サイズ、結構大きかった気がしますけど」
「うっ……その時は、バラキーと一緒に食べるわ。大丈夫、バラキーなら食べられるわ」
「まぁ、彼女ならきっと食べられると思いますけど……そういえば、彼女はどこに行ったんでしょうか」
「うぇ? バラキーいないの? マジで?」
フードコートに来てからバラキーの姿を見た覚えがない三人。
果たしてどこに行ったのだろうと考えていると、エウリュアレが、
「バラキーなら、さっきもう一度観覧車に乗ってくるって言ってマシュを連れて走って行ったわ」
「マシュさん、呼ばれてすぐにバラキーに連れていかれたのね……後でバラキーは捕まえておくわ」
「えぇ、マスターは任せておいて。どうせすぐ捕まるわ」
「そのセリフ言えるの、エウリュアレだけなんだよねぇ……茶々、エウリュアレにだけは喧嘩売らないよ」
やれやれ。と言いたげに首を振る茶々に、首をかしげるエウリュアレ。
「いや、別に、私以外にも捕まえられるサーヴァントはいるでしょ?」
「茶々が知ってるなかにはエルキドゥしかいないんだよねぇ……特に、今のマスターはね」
「……別段、何か変わってるとは思わないのだけど……いつも通りじゃないの?」
「あれがいつも通りなら、なおのこと問題だと思うんだよ……」
「まぁ、マスターと鬼ごっこでもしてたら、そのうち捕まえられるようになると思うわよ。そんなに速くないから、捕まえやすいと思うわ」
「えぇ……無茶言われてるぅ……」
「ま、まぁ、とりあえず、すぐバラキーを捕まえられるように観覧車に行ってるわね。エウリュアレさんは、マスターが周回終わったら連れてきて」
「えぇ、任せて。ちゃんと連れていくわ」
そう言って、エウリュアレは去っていき、アビゲイルは想像よりも大きなハンバーガーを渡されて頬をひきつらせるのだった。
マスターを捕まえられるのは極少数という問題点。逃げのプロは伊達じゃないのです。