「ふふっ……逃がさないわ?」
「くはは! 吾から逃げられると思ったか! 次は殺す!」
鬼王へ突撃していく二人。
毎度アビゲイルが最後まで残ってトドメを持っていき、バラキーは突撃しては倒され突撃しては倒されを繰り返していた。
「ねぇおかあさん。私たちは行かなくて良いの?」
「チェーンソーは万全だよ?」
「茶々の炎もバラキーを焼きたくて疼いてるよ?」
「今のところ三人とも休憩かな。後茶々。バラキー焼きは禁止ね。シャドウ・ボーダーに帰るまで我慢して」
「ぐぬぬ……バラキー焼き禁止された……」
バラキーへの殺意が妙に高い茶々に、落ち着けと思いつつバラキー焼きを禁止するオオガミ。
すると、ジャックは不思議そうな顔をして、
「バラキーを焼くの? 解体じゃなくて?」
「開拓じゃないの?」
「バラキーを解体は分かるけど、開拓ってなんだろう……潜在スキル強制開放的な?」
およそ何も考えずに行ったであろう言葉を首をかしげて考えるオオガミ。
それをベンチに座って見ていたエウリュアレは、
「ねぇアナ。観覧車に乗ってる間に何があったんだと思う?」
「さぁ……? でも、たぶんバラキーが茶々に何かをしたんじゃないでしょうか」
「そうよねぇ……でも、ハロウィンの時から妙に仲悪いからねぇ……」
「まぁ、たぶん大丈夫ですよ。どうせマスターがどうにかしてくれますって」
「そうねぇ……まぁ、最終的に私が引っ張られるんでしょうけど」
「その時は私も一緒に行きますよ」
「……あまり、戦いたくはないのだけど」
「私がどうにかします。たぶんその方が良いでしょうし」
そう言って、エウリュアレの斜め後ろに立っているアナはオオガミ達を見守る。
その本人達と言えば、
「とりあえずさ、マスター。こう、ちょちょいとバラキーを燃やしたいだけなんだよ。そうしたら茶々の気も晴れるしさ?」
「いや、それで茶々の気が晴れても、次はバラキーが報復しにいくから。茶々より話を聞いてくれないんだから止めてよ」
「ちょっと待って。今さりげなく茶々は話を聞かない方に分類しなかった? 茶々怒るよ!? 自覚あっても怒るよ!?」
「理不尽だね!? アビーに襲撃させるよ!?」
「バッチコイだよ! 茶々負けないし! むしろウェルカムだし! 返り討ちにしてやらぁ!」
「ノッブ並みになってきてるよ茶々! いや、礼装持っていくから負ける気しないけど!」
「マスターも来るのは卑怯じゃない!? 一対一じゃないの!?」
「鎮圧には全力で! 今だけ風紀組だし!」
「最低だこのマスター!」
二人はそう言い合って喧嘩をしていた。
ジャックたちはそんな二人に飽きて、エウリュアレの近くに移動していた。
そんな二人に、エウリュアレはため息を吐くのだった。
竜属性……鮮血魔嬢……一体誰なんだ……