「今さら気付いたけど、なんでクエスト解放が8時半なのか。それは、ニチアサが大体この時間だからじゃない……?」
「なんでそんな大発見みたいに言ってるのよ」
衝撃の事実と言わんがばかりの表情をしているオオガミに、冷めた目を向けるエウリュアレ。
服装は同じだが、髪をおろして黒縁のメガネを掛けているので、昨日とは少し印象が違う。
何故メガネを掛けたのかを聞くと、変装のため、だそうだ。はたして誰の目を欺くのだろうか。
「いや、なんとなくみんな気付いてるんじゃないかなって思ってた。でも、言わずにはいられなかった」
「そ、そう……まぁ、良いんじゃないかしら。周りに誰かいる訳じゃないし」
「本当にねぇ……みんな何処に行ったんだろう」
いつの間にか誰もいなくなっている拠点に、どうしたものかと考える二人。
アナだけでもいるかと思っていたのだが、探してもいないので、やはりいないのだろう。
「……霊体化してたりしない?」
「それならあなたも分かるでしょ。自分のサーヴァントなんだし」
「だよねぇ……ってことは、本当に遊びにいったのか……」
「いえ、アビーがいるから、食べ歩いてる可能性もあるわ」
「まさか。エウリュアレじゃないんだし」
「…………」
直後、飛び蹴りを食らって転がっていくオオガミ。
無言の飛び蹴りは、肉体的にも精神的にも大ダメージだった。
「全く。誰が食欲魔神よ。私、一回もそんなことになった覚えはないのだけど」
「誰もそう呼んでないのにも関わらず自分でそう言っちゃう辺り、自覚があるんですね……」
「……何よ。自覚した上で変えようとしてないのは問題かしら?」
「いや、それは無いよ。それを言ったら、こっちも変えなきゃだし」
「……まぁ、そういうところを変えられたら、私も困るわ」
エウリュアレはそう言ってそっぽを向き、頬を膨らませる。
オオガミは少し困ったように笑う。
とはいえ、食事目的以外でこの場を離れるとしたら、遊びに行くくらいだろうか。
アナもいないのは、バラキーかアビゲイルに連れていかれたのだろう。
「とにかく、今はみんな見つからないから、探しに行かないといけないわけだけど、どうする?」
「探しにいくわよ。新しいところを見てみましょう。そこにいるかもだし」
「そうだね。見落としてるとしたらそこくらいか。じゃあ、行こうか」
「えぇ、そうね。早く行かないとすぐ他の場所に行きそうなメンバーだものね」
そう言って、小走りでティーカップへと二人は向かうのだった。
オニランドを鎮圧しないでも平然と遊べるのがここのマスターとエウリュアレ。
集団で暴れながら遊ぶのが現在失踪している子供組。
はたしてどっちの方が危ないのか……