「これで一段落かな?」
大聖杯は破壊され、アイリを召喚できた事で、一息吐くオオガミ達。
ただ、アンリは一人複雑そうな表情をしていた。
「……なんつーか、今更なんだが、俺消されちゃいそうじゃね?」
「アンリは消えないわ。消えたら私が引きずり戻すもの」
そう言ってアンリの隣に座るのはアビゲイル。
それに対して、言われたアンリの方は苦笑いしか出来ない。
「あら、アンリはそう簡単に死ねないようにされたみたいね。ふふっ、頑張りなさい?」
「そもそも前線に出ないのに消えるも何もないと思うのですが」
「おいマスター。こっちの姉妹はアンタの担当だろうが。毒吐いてくるんですけど~」
「それを言うとほとんどは俺の担当になるんですが。アンリは誰担当なのさ」
「……オレはほら、あぶれ者担当だからな。いや、暇人担当か?」
「……このイベント終わったら厨房担当する?」
「いや、それは止めておくわ。あそこ一番危ねぇじゃん」
現在、厨房はエミヤとキャットの二人体制だが、スカディを筆頭に子供サーヴァント達がおやつを巡って争っていることがよくあった。
なので、わりと危険地域ではあるのだ。そして、アンリは当然、それを知っている。
「まぁ、やるとしても倉庫番辺りだろ。まだ安全そうだ」
「そう? マシュの管轄だから分かんないけど、わりと大変そうだよ?」
「えぇ……はい。アンリは全く手伝わないの分からないと思いますが、整理はとっても時間がかかりますし、倉庫番は監視範囲が広い上に狙ってくるのが複数人いるのでかなり辛いですよ」
「……ニートで良い?」
「許すと思った?」
アナの言葉を聞いて、震えながら無職宣言をするアンリに向かって、無情にも却下するオオガミ。
「いや、いやいや、マスター? 冷静に考えろよ。オレは最弱サーヴァントだぜ? 使う価値とか無いだろ」
「ネタ枠」
「最低だなアンタ! いや、この性能だと否定できねぇんだけどさ!?」
「まぁ、アンリはいてくれるだけで助かるので。具体的には、犠牲者が増える」
「被害者の会……! 一体何の被害者だよ……!?」
「そりゃあ……BBとか、アビーとか?」
「なるほど。そりゃ、納得だ。だがな、マスター。本人がいる状況で言うのはどうかと思う」
そういうアンリの隣では、無言で満面の笑みを浮かべるアビゲイルの姿があった。
そんなアビゲイルの後ろからひょっこりと顔だけ出したエウリュアレは、
「酷いわね。マスターったら、アビーはBBと同じ問題児だって言い切ったわよ? これは一度仕置きしないとよね?」
「……マスター覚悟ぉ!!」
「ぎゃああぁぁぁ!!」
飛びかかってくるアビゲイルから、必死で逃げるオオガミ。
それを見て、満足そうなエウリュアレと、苦笑いを浮かべるアンリが残されるのだった。
激戦区は厨房……スカディの支援は強敵……
アイリは今日来たばかりなので、種火がない我がカルデアにおいて、しばらくは使えない悲劇。