「マスター! 帰ってきたわよ!!」
「うわっぷ! あ、アビーが飛びかかってくるとは思わなかった……」
遠目に見えた瞬間に門を開いて飛び掛かってきたアビゲイルを正面から受け止めるオオガミ。
ちなみに、オオガミはようやくハサン集団を倒して再び帰ってきたばかりだった。
「それで、離れている間、何してたの?」
「食べ歩きをしていただけよ。エウリュアレさんが先導して、ずっと食べてたわ」
「あぁ……うん。エウリュアレらしいね。それで、どれだけ使ったの?」
「さぁ? アナさんが止めなかったから、たぶん残ってるとは思うのだけど」
「ん~……アナはエウリュアレ相手だと基本止めないから……後で見ておくよ」
「えぇ、お願いね。マスターの顔を見たらすぐにまた行くって言っていたもの。用意しておかないとダメよ?」
「あはは……いや、残金の消耗が尋常じゃない……次回の給料に期待せざるを得ない……」
遠い目をするオオガミ。アビゲイルは苦い顔をするも、特には言わない。
そこでようやくエウリュアレ達が戻ってくる。
「あら、アビーだけがいれば良かったかしら」
「帰って来なくても良かったかもしれませんね。今から戻りますか?」
「流石にそこまではしないわよ……というか、帰るのにもアビーの門を使いたいのだけど」
そう言って、オオガミの近くに移動するエウリュアレ。アナは少し離れたところから見守っていた。
「ところで、どれくらい終わったの?」
「さぁ……? 正直、どれだけ掛かるのか分かんないから、進み具合も不明。ただ、なんとなく後半な気はする」
「そう……まぁ、順調なら良いわ。それで、私たちの出番はありそう?」
「いや、無いかな。正直、三人の出番は、あったとしても高難易度くらいじゃない?」
「ふぅん……じゃあ、たぶん出番はないわね。ねぇ、バニヤンとジャックも呼んで良いかしら。その方が騒げると思うし」
「流石にこれ以上サーヴァントを増やすのは微妙。どっちかって言うと、マシュに殺されそう」
「あ~……それならダメね。諦めましょう。まぁ、ネロ祭の時に暴れられるでしょうし、その時で良いわ」
エウリュアレはそう言ってオオガミから離れる。
すると、アビゲイルもオオガミから降りてエウリュアレについていった。
首をかしげるオオガミに、アナが声をかける。
「姉様は、たぶん話し相手を増やしたいだけですよ。今のままでも十分だけど、多ければ多いほど良いというだけの感覚です。あんまり気にしないでください」
「そうは言われてもね……チビッ子サーヴァントはエミヤさんがしばらく見てくれてると思うし、安心して任せてはいるんだけど……たぶん、心配なところもあるんだろうなぁって」
オオガミはそう言って少しの間エウリュアレを見たあと、ふと思い出したようにアナの方を向くと、
「そういえば、財布の中身って残ってるの?」
「……どうぞ」
そう言って、アナは目を逸らしつつオオガミに財布を渡すのだった。
エウリュアレが何かを気にかけるときって、なんとなく何かをやらかしているときな気分……気のせい……?