「……何してるの?」
「あら、エウリュアレさん。何って、お姉ちゃんとして、弟君の寝顔を見ていただけですよ」
「普通はしないと思うのだけど」
そういうエウリュアレの視線の先には、ぐったりとして寝ているオオガミと、その隣に椅子を持ってきて、座っているジャンヌがいた。
「お姉ちゃん的には、膝枕をしたいんですが、ちょっと無理そうなんですよ」
「何考えているのかしら、この聖女……というか、なんでよ。やろうと思えばできるでしょうに」
「いえ、流石にこの状態でやるのは無理ですよ……」
そう言って、ジャンヌがオオガミに掛かっている布団を捲ると、そこにはアビゲイル、ジャック、バニヤンの三人がいた。
「……どういう状況?」
「見たままとしか……私が来たときからこんな感じでしたよ」
「そう……ところで、貴女のオルタの方は? 昨日アビーがマスターを引きずってきてから見てないけど」
もうオオガミの事は気にしないようにして、昨日以降見てない邪ンヌについて聞く。
「あ、そうですそうです。聞いてください。あの子ったら、昨日部屋に帰ってきたと思ったらスッゴいボロボロで、そのまま寝ようとしたんですよ! 流石にお風呂に入れましたけど、なんでボロボロなのかは一向に答えてくれないんです! 酷いじゃないですか!」
「いえ、流石に酷いとは思わないけど……結局答えは分かったの?」
「それがさっぱり。今もぐっすり寝てるので、ジーク君がいる場所を避けながらここに来たんです。きっと弟君なら知ってると思ったので」
「……つまり、昨日何があったかを知るためにここに来て、寝てるマスターに遭遇したわけね」
「大体そんな感じです。ところで、エウリュアレさんは何をしに来たんですか?」
ジャンヌに逆に聞かれ、言葉に詰まるエウリュアレ。
少し考えたあと、
「本をね、借りに来たのよ」
「本ですか? 一体どんな本を?」
「この前のサバフェスで買ったものよ。マスター、色々なものを買ってきたから」
「そうですか。もし良かったら、私の部屋のも見ていきますか? たぶん、弟君よりもあると思いますし」
「そうなの? じゃあ、今度お邪魔させてもらおうかしら」
「ふふっ。案外、エウリュアレさんも人間らしいところがあるんですね」
「……私、そんなに変わった覚えはないのだけど?」
「じゃあ、きっと最初からそうだったのかもです。まぁ、私は見てないので知りませんが。ただ、弟君――――いえ、マスターとほとんど一緒にいるので、たぶん気が合うんですよね。これからもよろしくお願いしますね」
「別に、お願いされるまでもないわよ……」
そう言って、ジャンヌの隣に椅子を持ってきて座るエウリュアレ。
「まぁ、私としては、自然体でいても何も言われないから楽なのよ。それに、イタズラしてもそこまで嫌われないっぽいし」
「それは良いことです。自然体でいれるということは、信頼してる、されてるということですから。ただ、あまり迷惑はかけないようにしてくださいね? 逆もまたしかり。弟君が迷惑をかけていたら、私に言ってください。しっかり叱りますので!」
「ふふっ。お手柔らかにね」
そう言って、エウリュアレはジャンヌに微笑むのだった。
ジャンヌさん、ブレッブレ。否、キレッキレ。誰だこんなキャラにしたのは……