「先輩……ですか? いえ、行方不明ですけど」
そう答えたマシュの視線の先にいるのは、邪ンヌ。
海辺でくつろいでいたマシュと騎士姫は、既にオオガミを探すつもりが無いのは目に見えていた。
「う~ん……別段用があるわけでもないんだけど、何となく嫌な予感がするのよね……」
「嫌な予感ですか? ん~……基本先輩は何とかするんですけど……邪ンヌさんが言うなら、一応気にした方が良いですかね」
「そうですね。そもそもマシュさんはマスターを探していたわけですし、探しに行くのもありじゃないですか?」
「なんでアンタ達はアイツがどこにいるのか気にしないのよ……」
「まぁ、先輩は無駄に強固ですし……」
「結構狙われても生き残ってますしね……」
「えぇ……何よそれ……」
マシュと騎士姫の反応に、困惑する邪ンヌ。
そんな邪ンヌの困惑をスルーしつつ、サクサクと片づけを始める二人。ようやくオオガミを探すつもりになったのだろう。
「よし、じゃあ探しましょうか。それで、どこにいるんでしょうか」
「いや、私はそれを聞きに来たんだけど……」
「邪ンヌさんが嫌な予感を感じでここに来たんですから、きっと浜辺にいますよ!」
「なるほど。じゃあ、とりあえず向こうから探していきましょうか
「う、うぅ~ん……まぁ、それで行きましょうか。そのうち見つかるわ」
そう言って、浜辺を歩き始める三人なのだった。
* * *
「ところでお姉ちゃん。イルカを撃つのは流石にどうかと思う」
「はぅっ。それを言われると反論できないのですが……!!」
「……今更なのだけど、どういう状況なのよコレ」
ジャンヌを姉の様に扱うオオガミと、オオガミを弟の様に扱うジャンヌという状況に困惑するエウリュアレ。
今は特に意味も無く浜辺を散策していた。
「イルカを射出するという発想が凄いですよね。撃つとは思いませんし、その上あの正面からの見た目はちょっと怖いですよね」
「いや、それはそうだけど、そうじゃないでしょう? とりあえず、突撃しようかしら」
「えっ、姉様、何をするつもりですか?」
アナの確認よりも先に、オオガミの肩に乗るエウリュアレ。
オオガミは一瞬よろめいたが、すぐに体勢を立て直して落ちないようにする。
「まぁ。エウリュアレさんは弟君がお好きなんですね!」
「そんなわけないわ。むしろ逆よ。私を好きなのがマスターなのよ」
「……一番の被害者であろう俺は何処から突っ込めばいいんだと思いますかアナさん」
「素直に殺されてみればどうでしょうか。冥界帰りはお手の物でしょう?」
「やだこの娘……殺しに来てる……」
ジャンヌとエウリュアレの言い合いを聞きつつ、オオガミはひっそりとアナに殺されそうになっていた。
そろそろジャンヌもこちら側に引きずり込めるのでは……? だが、先に引きずり込むのは恐らく邪ンヌが先になる気がする……