「マスターの部屋に突撃どーんっきゃああぁぁぁぁぁ!!??」
言葉の通り、オオガミの部屋に突撃したアビゲイルは、椅子の上でエウリュアレを抱えたまま寝ているオオガミの姿を見つけ、悲鳴をあげた。
抱えられていたエウリュアレは、アビゲイルが叫び始めると同時に読んでいた本を膝の上に置いて素早く弓矢を取り出し、眉間に矢を放つ。
その素早い一連の動作に、驚いていたアビゲイルが避けられるはずも無く回避することなく直撃し、部屋の外へと吹き飛んでいった。
「ふぅ……あまりうるさくすると、起きるでしょ。起きたら読み直す時間が無くなるんだから、止めてほしいわ」
「う……ぐぅ……なんで突然射られたのかしら」
「今言ったじゃない。もっと静かにしなさい。マスターって、意外と寝てなかったりするんだから」
「えっ、本当に? じゃあなんでマスターがそこで寝てるの?」
「……それはその、あれよ。本を読んでたら寝落ちしただけよ」
「そう……じゃあ、なんでエウリュアレさんはマスターの膝の上にいるのかしら」
「……まぁ、一緒に本を読んでいたからかしらね?」
「じゃあ、マスターが寝たんだから、移動しても良いと思うのだけど! あと、なんか髪型が変わってない!?」
「それは、本を読むのに邪魔だって言われたから、髪型を変えてもらっただけよ。それと、本を読んでいたから動きたくなかったのよ」
「むむむっ……エウリュアレさんだけずるいわ! 私もそこに座るから!」
「え、嫌よ」
跳びかかってきたアビゲイルを冷静に射落とすエウリュアレ。
触手の展開すらも間に合わない一瞬の出来事だった。
「むぐぅ……まさか一瞬で止められるとは思わなかったわ……というか、門を開くより速いとか、前より強くなってないかしら……」
「暇つぶしの賜物ね。貴女の門は、開いたとしてもまだ対応できるもの」
「なんでかしら……私も強くなったと思うのだけど……」
「レベルが上がったからって、勝てるなんて言えないわ。運悪く、相性が悪かったと思ってなさい」
「そんなぁ……」
先ほどからエウリュアレの真上に門を開いて襲撃しようとしているが、開こうと思っている地点になぜかエウリュアレが的確に矢を向けていることから、開くと同時に射られそうなのでどうしようかと考えるアビゲイル。
「まぁ、ベッドなら使っててもいいんじゃないかしら。もしくは、新しく椅子を持ってきて、隣に座ったらどうかしら」
「むぅ……じゃあ、そうするわ」
アビゲイルはそう言うと、門を開いて椅子を設置して、その上に座るアビゲイル。
不機嫌そうだが、オオガミの隣に移動したので、少し嬉しそうにもしていた。
エウリュアレはその様子を見て、安心したようにため息を吐いた後、また本を読み始めるのだった。
誰がこんな風にしたんや……エウリュアレの性能がぶっ飛んでるじゃろ……どんどん設定を超越していくぅ……