異聞帯での料理(思い出すだけで泣けそう)
「右は暑くて、左が寒い……」
「背後にいる私もその影響を受けているのだけど……」
右には茶々、左にはアナスタシア。そして背中に張り付くエウリュアレ。
じゃあ背中に張り付いていなければ良いのではないだろうかと思うが、それを言うと腰に一撃思い蹴りが入って数分動けなくなるのは明らかなので、何も言わないでおくオオガミ。
このせいで裏で『エウリュアレに甘い』だとか『実質夫婦』とか変な噂がたっていたりするが、アビゲイルが秘密裏に消し去っているので本人たちの耳に入っていなかったりする。
「今更だけど、何をするの?」
「いや、何をするという訳じゃなかったんだけど……そもそも、部屋を出た瞬間についてきたのは三人じゃん……?」
「茶々、何も言ってないんだけど?」
「えぇ。私も、ただついていっているだけですし。何をするかなんて気にしてないわ」
「そ、そう……? 気にする方がおかしいのかしら……」
全く気にしていない様子の二人に、自分の感覚を疑うエウリュアレ。
「いや、そこはそれぞれだから気にしないけど、そうだね。とりあえず、シチューでも、作ろうか。うん、ゲッテンデメルングで食べたシチューが記憶に残ってるからね。なんというか、消える前に作っておこうかなって」
「……別に、わざわざ作る必要はないと思うのだけど……そもそも、アナスタシアの時は作らなかったでしょう?」
「そりゃ、あそこじゃ、食べる事自体が難しかったし、料理なんて文化もなかったからね。言うなれば、あの肉自体がアナスタシアでの料理かな? 火酒はちょっと再現できないけど」
「そ、そう……でも、材料的には作れるの?」
「……あぁ、それは考えなかった……仕方ない。レシピをメモしておいて、いつか作ることにしよう。今日は諦めて他のものを作るとするよ」
「イベントの時にまたかき集めないとね。茶々も手伝うよ。整理をね!」
「私もそっちで頑張るわ。私の担当は宝物庫だもの。それ以外の時は倉庫整理を手伝っているわ」
「……実は、マシュの苦労はかなり減っているのでは……?」
しかし、マシュは今でもひたすらに働いているので、不思議に思うオオガミ。
ジークやアヴィケブロンに至っては、ほぼ常に手伝っているので、もうほとんどやることがなくなっていても不思議ではないし、むしろ休んでいても良いくらいだろう。
「……マシュ、何か隠してる……?」
「さぁ……? でも、ちょっと気になるわよね」
「うん……まぁ、いつか探ってみるかな。とりあえず、今はご飯が優先かな」
そう言って、オオガミ達は厨房へと向かうのだった。
料理の話でも書くか~って思った瞬間に、ゲッテンデメルングでの場面を思い出して再び精神ダメージを受けた私です。致命傷……(コフッ