「色々と種類があるね。以蔵さんは何にする?」
「そうさのう……って、なんでおまんは儂のとなりにいるんじゃ!」
「お竜さんもいるぞ」
「しっちゅうわ! つか、儂ぁ一人でええんじゃ! ほっとけ!」
そう言って、ずかずかと進んでいく以蔵。龍馬は苦笑いしつつ追いかけ、お竜さんはその後ろをついていく。
すると、異様な雰囲気の屋台を見つける以蔵。その雰囲気に誘われるようにそこへ向かうと、
「あら。特製たこ焼きはいかがかしら。エミヤさんから教わったのだけど、うまくできているか分からないの。6個入りで200QPよ」
暗黒面全開のアビゲイル。
その独特の雰囲気に飲まれた以蔵は、
「ん、あ……おぅ。じゃあ、一つ」
「お買い上げありがとうございます。少々お待ちください」
妙に大人びた雰囲気。接客に慣れたのか、何かに飲まれたのかは分からないが、オオガミ達が今のアビゲイルを見ても、思わず硬直するレベルの変わりようだった。
そして、出来立ての妙な圧を放つたこ焼きを渡された以蔵は、それを持って呆然としていた。
「ようやく追い付いた……って、何買ってるの以蔵さん!! それ明らかにヤバイと思うんだけど!!」
「わ、儂だってわからんちや!! 気付いたら買っちょったんじゃ!!」
追い付いた龍馬は、以蔵の持っているたこ焼きに驚きつつ、どうしたものかと考える。
が、後ろにいたお竜さんが、勝手に一つ食べる。
「……うん、龍馬は絶対食べちゃダメだぞ。これは腹を壊す。流石のお竜さんも、これはダメだ」
「お竜さんがダメなレベルは不味すぎるんだけど!! ここ、こんな怖いところなの!?」
悲鳴を上げる龍馬。
怖いところも何も、人類悪を相手取るようなサーヴァント達が集う場所が恐ろしくないわけがない。
「安心してくれて構わない。こういうのは特殊だ。とはいえ、俺も最近来たばかりだがな」
そう声をかけるのは、同じようにたこ焼きを買ってしまい、真っ青な顔で話すジーク。本能的にコレが危険なものだと気付いているらしい。
その隣では、ジークと同じような表情で、しかし勇敢にもたこ焼きと戦おうと自分を奮い立たせようとしている騎士姫がいた。
「こ、これは……中々、食べるのが難しいです……なんというか、食べたらこっちが食べられそうと言うか……」
「あぁ。いや、こういう時はマスターの元へ行くのが一番だとマシュに聞いた。これ以上被害が拡大しないためにも早めに向かおうと思うのだが」
「僕もついていくよ。これは流石に不味い。急いだ方がいいと見たね」
そう言って、ジークと龍馬がスタッフルームへ向かうとしたとき、背後で倒れる音がした。
そこには、青い顔をして倒れている騎士姫と以蔵がいた。
「い、以蔵さーん!!!」
「あ~あ。やめた方がいいっていったのに」
「不味いな……こっちも大変なことになってる。とりあえず最初に向かうのは医務室だな」
「あぁ、大至急ね!!」
そう言って、二人を抱えて、龍馬とジークは走り出すのだった。
なんで食べたんや……以蔵さん……騎士姫……(犯人