「う~ん、そういえば確かにCMでアイス食べてたよね。聖杯っぽい器で」
「つまり、倒せばいいのよね?」
「ねぇマスター。あの眼鏡とマフラーをつけた人が飲んでたのは何かしら。私も食べたいのだけど……」
「アーチャーの敵はお任せください。ちゃんと狩り取ります」
「バーサクライダー並みのことはしないように祈るよ。首は要らないです」
遂に始まったぐだぐだな戦い。
というかそのアイスは誰が作ってどこで買ったんだよと突っ込みたいのが何名かいるが、大方エミヤが原因なのでノーコメントでいるオオガミ。
「とりあえずランサーから仕留めたけど、何あのちびノブ。すっごい聞き覚えのある鳴き声だったんだけど」
「赤い槍を持ってそうだったわよね」
「クワを持ってても違和感無さそうな声だったわ」
「青タイツっぽい声でしたよね」
「あくまでも遠回しに言っているようだが、ほぼ特定されるな」
「いや、ほら。一応遠回しに言っておかないと、本人に怒られるかもしれないし」
某青タイツさんのプライバシーを考え、遠回しに言うオオガミ達に、苦笑いをするエミヤ。
もはや個人特定出来るレベルなので、隠しているようで全く隠れていなかった。
「しかし、ダビデ印のコーヒー牛乳とは……ノッブめ、俺ですら飲んでないものを……」
「……いえ、気付いてないだけでマスターも飲んでるわよ……?」
「え?」
「だって、カルデアでたまに私が飲んでたコーヒー牛乳はそれだもの。少し飲ませてあげたはずなのだけど」
「え、あ、う~ん……あぁ、あれか! うん、飲んでたわ!!」
「思い出したかしら。お礼はアビーが食べたがっているもの私の分も用意してくれればいいわ」
ドヤ顔のエウリュアレの後ろに回って抱きつくアビゲイルと、全く気付いてなかった自分に殴りかかりたいオオガミ。
とはいえ、文系バーサーカーが頼んでいたものは、テキストにして三行分に近い量があった。
「思いっきり要求してきたね……いや、買ってくるけども。というか、ついてきてよ?」
「えぇ。アビーと一緒に行くわ。アナも行く?」
「姉様が行くのであれば私も行きます。留守番はエミヤさんに任せます」
「あぁ、行ってくると良い。私は待っていよう」
「エミヤにはいつも迷惑をかけているような……まぁ、料理長してもらっている時点でかなり大変なのは分かってるんだけど」
「後で労ってあげれば良いんじゃないかしら。まぁ、私の領分じゃないわね」
「むぅ……まぁ、やれることはやってみようか」
見送るエミヤと、見送られるオオガミ達。
謎の長文注文への戦いへと赴くオオガミの姿に、エミヤは面白そうに笑みを浮かべるのだった。
聖杯っぽい器ごと売っているアイスとは……
しかし、ダビデ印のコーヒー牛乳……ちょっと飲んでみたい……