「うぅむ、牙と酒かぁ……今のところ、切羽詰まってる訳じゃないんだよねぇ……」
「でも、取っておいて損はないわ。一応行けるだけ行って集めておきましょうよ」
「うへぇ……たまに廊下で倒れてる花咲かせてる魔術師って、たぶん同じことしてたんだろうなぁって……」
「見てるだけなのに、なんでかしら。悲しくなってきたわ」
冷静に手に入るアイテムを分析しつつ、とりあえず回ろうと決めるオオガミとエウリュアレ。
それに反して、地面に倒れて死にそうになってる茶々と、悲しそうな表情のアビゲイル。
とはいえ、茶々と代わろうと言うつもりがある人物は誰もいなかった。
「まぁ、茶々にはハンティングクエストが出てる間は周回してもらうけどね」
「ちゃ、茶々、もう帰りたい……帰ってゲームするんだ……」
「一週間頑張ってね、茶々さん……」
「そうやってすぐ助けるのを諦めるの、茶々素直に尊敬する」
「影響されないでよ。というか、割と誰にでもそんな感じよ?」
「私、そんなにひどくはないと思うのだけど」
「自己評価と周囲の評価は別って事だよ。だってほら、未だに謎の悪評が絶えないマスターがいるんだから」
「明らかにマスターの事だそれー!」
後輩が重労働している中、特異点で楽しんでいるといういわれも無い噂が立っている不思議。
なので、そんな噂がいつの間にか立ってしまっていたオオガミは、そんな経験談からアビゲイルを慰めるが、明らかにオオガミのダメージの方が大きいのでアビゲイルが逆に泣きそうになっていた。
「さて、とりあえずサクッと周回していこうか」
「サクッとやるために茶々が倒れるんだけど……伯母上に全部任せたい」
「ノッブは限定的にしか強くないから、無しです。つまり、茶々無双って事だよ」
「たぶん本来なら嬉しいんだろうけど、茶々的には拒否したい欲が……」
「それで拒否できるなら私は絆10になってないわよ。諦めて周回に行ってきなさい」
「茶々、遠くから見守っているわね! マスターはこっちで守っておくわ!」
「茶々は救われないのかー……茶々以外戦えるアタッカーがいないのが問題だよねこれ……」
増えないアタッカー。朝にオオガミが召喚していた全体宝具バーサーカーがいたような気がするが、レベルが足りないので、シャドウ・ボーダーで留守番という放置スタイル。今頃料理担当になっているだろう。
「ねぇマスター。今ふと気になったのだけど、どうやって召喚しているのかしら。召喚施設はここにはないと思ったのだけど……」
「アビーに一時的に開いてもらって召喚して置いて行ってる感じ。帰ったら場合によっては殺される気がする」
「なんで最初からクライマックスなのか。茶々は面白いのでもっとやれって思います」
エウリュアレの質問に、サラリと死ぬ可能性をほのめかして答えるオオガミ。
茶々はそれを聞いて、とても楽しそうな表情になるのだった。
種火が落ちるからゆっくりとレベルが上がっていく優しさ。とはいえ、そんなに変わりはないんですけどね。