「ふっふっふ……エウリュアレさんも、流石にすぐ引き返してくるとは思わないはずよ」
「二人っきりで放置したらどうなるか見たこと無いし、ちょっと楽しみな茶々がいる……んで、場合によってはマシュに報告しよ。炎上間違いなし! やだっ、茶々ってば、パパラッチ!?」
走り去ってすぐに、門を開いて帰って来た二人。アイコンタクトだけで見事な連携を取り、こうやって二人から隠れた辺り、かなり相性が良いのだろう。
という事で、二人の監視を始める二人。その直後。
「わ、わわわっ! マスターの腕にエウリュアレさんが抱き付いているのだけど! なんで!?」
「わぉ。開幕大胆だねエウリュアレ。茶々ビックリ。どうする? もう乱入しちゃう?」
「えっ……い、いいえ! 乱入しないわ。今日は偵察だもの。エウリュアレさんが何をするのか、ちゃんと見届けないと……!」
「ふぅん? ま、茶々は面白ければオッケーだし。やだ、茶々ってば、悪女?」
既に頬がぷっくら膨らんできたアビゲイル。それを見て、茶々は内心笑いつつも、表面上では悟らせない。
「むむっ……茶屋の方向ねっ! 移動するわよ!」
「門の多用は察知されるだけだと、茶々は思うのです。まぁ、歩きたくないから使うけど」
監視対象が移動すると同時に、門を開いて位置を変えるアビゲイルと茶々。
門を開くときの魔力でバレるんじゃないかという茶々の呟きは、誰も聞いていなかった。
* * *
「……?」
「どうしたの? エウリュアレ」
「いえ……なんでもないわ。気にしないで」
「そう? じゃあ、買ってくるね」
そう言って、大判焼きを買いに行くオオガミ。エウリュアレはそれを見送った後、すぐに周囲を軽く見渡す。
そして、すぐにオオガミに視線を戻す。
「ん~……後行ってないところってあったかしら……」
「食べ物系はコンプだよ。まぁ、裏路地に店があるとしたら別だけど」
「流石にそこまでは言わないわよ。裏路地入って面倒なのに絡まれても面倒だしね」
「そうだね。よし、じゃあ散策しながら食べようか」
「えぇ」
オオガミの左腕を掴み、隣を歩きながら左手で持った大判焼きを食べつつ歩いていく。
「ん。ねぇマスター。中身違う?」
「いや、こしあんかつぶあんかってくらいだよ?」
「そう? 私のはこしあんだから……そっちのもちょうだい?」
「いいけど……はい」
「ありがと」
そういって、オオガミの大判焼きを食べるエウリュアレ。
「ん~……私はやっぱこっちで良いかも」
「了解。帰ってからのお菓子作りでもそこら辺考えないとなぁ……」
「頑張ってね、マスター」
そう言って、二人はまたしばらく歩くのだった。
裏路地で触手をビッタンビッタンしている幼女がいたとかなんとか……