「新撰組……怖い、怖いわ……」
「あぁ、これはもう、諦めるしかないわ……」
「二人とも、そんなになるようなことでもないでしょ? まぁ、マスターは後でマシュに怒られるでしょうけど」
宿屋の一室を借り、周回をチマチマとしているオオガミ達。
そして、アビゲイルとオオガミは、その部屋の隅で、同じようにカタカタと震えていた。
「戻ったよっ! って、ナニコレどうなってるの?」
「えぇ。アビゲイルは、土方に一勝二敗して落ち込んでて、マスターは、持っていた石と貯蔵していた聖晶片を使い切って大爆死したの。アビゲイルに関しては、運が無かっただけなんだけど、マスターは前半は許せるとして、後半はもうちょっと自制するべきだと思うわ」
「はい……ごもっともです……」
「うわ。ガチで凹んでるやつ。大丈夫だってマスター! 茶々だって、殿下のお金でめっちゃ遊んだし!」
「まぁ、だからと言って、マスターが怒られる運命は変わらないのだけどね」
「残念。殿下ほど甘くはなかったかぁ……」
死んだ目の二人を見つつ、エウリュアレは楽しそうに、茶々は励ますように話す。
とはいえ、やったことはもう戻らないので、アビゲイルの件はともかく、オオガミはマシュに吊し上げられる運命だろう。
「茶々的には良いと思うんだけどね? もっと気楽に行こうよマスター」
「やっちまった事実と、爆死した事実と、マシュに怒られる運命の三コンボで轟沈です……」
「あれは重傷ね……流石に無理だと思うのだけど」
「むぅ……中々の強敵……というか、落ち込んでるのが隣り合わせになってるのが問題なんだよっ! つまり、アビーの方をどうにかするべきだと茶々は見たね!」
「そう? で、対策は?」
「……カルデアを取り戻したら、叔母上をいくらでもサンドバッグに出来るから楽しみに待っててねっ!!」
「ノッブ……売られたわね」
ここにはいないノッブは、静かに生け贄宣言された。
しかも、結構ハッキリとサンドバッグ宣言だ。帰ってくるなり悲惨な目に遭うのだろうと、容易に想像できるのだった。
「ふ、ふふ。ふふふ。大丈夫、大丈夫よ。私は別に怒ってないもの。ただ、スッゴく疲れただけだもの。でも、マスターの近くで休んでたからもう大丈夫よ。あぁ、マスター。次も私、頑張るわ」
「……一番危険じゃない? アレ」
「……私、たまにアビーが一番怖いのよね……」
狂気を感じるアビゲイルの微笑み。
いつの間にかオオガミを引き倒して自分の膝の上に頭を乗せていたのだが、それ以上にその微笑みは怖かった。
なので、そんな微笑みを見たエウリュアレと茶々は、一瞬身震いした後、オオガミを置いて外へと脱出したのだった。
狂気全開アビゲイルっ! 気付いたらアビーがこんなことになってましたよ……
とりあえず、沖田さんは来てくれないらしいので、もうメルトリリスを引くまで引く予定はないですね。