「その六にしてこの進み具合……これは裏があると見た」
強襲されて意識が落ちたわけだが、その程度で慌てるほど弱い精神はしていない。むしろ、戻ったらどうするかを冷静と考えるレベルだ。
「ただ、現状と証拠を考えても、確かにあり得そうな話だけど、どうしてここまで非常に徹することが出来るのか……」
当然、それなりの理由もあるのだろう。とはいえ、見つかったときのリスクは大きい――――
「いや、待て。もしバレたとして、どこに問題がある?そもそも、ここを手配したのは彼ら商会。バレたとしても、全員始末してしまえば良いだけの事……」
そこまで考え、ふと、彼らの商売を思い出す。
『信用で商売』している人達だ。
また、ここで抗争が終結した場合、抗争に必要な武力を売るという、最大の商売が消えるわけだ。
「さて、もう終盤に差し掛かってきているけども、全く分からないね。とりあえずアンさんを殴り倒せば真犯人かな?」
もはや物理に訴えるという推理を冒涜するが如き脳筋発想。
とはいえ、物理的に生命の危機に陥っているというのは、些か不安だ。具体的にはうっかり殺されでもしたらジュリエットを守れないわけで、あのラブコメの続きを見れなくなってしまうわけだ。
それはちょっと解せない。そんな事態は個人的に許せない。
というより、あの一枚絵に殺されたのが主な理由だが。
「さて、次の目覚めは、ベッドの上か、椅子に縛り付けか、既に首吊り状態か、海流しの刑か。理想は地下かなぁ?」
というより、それが一番可能性が高そうだよな。と思いつつ、格闘できるような人間に敵うほど強くないので、普通に死ぬ。もはや逃げる事すら敵わないと思うので、諦めて悲鳴を上げつつ殺されるしかないだろう。
正直、謎解きのなの字すらない無情さ。
「まぁ、探偵が被害者になるのは自然だよね!! 諦めて死のう!!」
なんて言いつつ、死ぬつもりは微塵も無い。数多の戦場を越えてきた人類最後のマスターが謎解きごときで死ぬなど、あってはいけないのだ。というより、死んだら殺されそうな気がするのが不思議だ。
「さて、じゃあ次の謎解きと行こう。後半戦。とりあえず、目覚めたら生きるか死ぬかの戦争をしないとね」
最初からクライマックス。目覚めると同時に逃げるという心づもりをしておこうと思い、状況の最終整理をする。。
武器は持っていないはずなので、やる事はただ一つ。魔術礼装などないから全力で逃げるのみ。
そして、目覚めを感じて、逃げる事だけを意識するのだった。
一体これ以上どうしろってんですか。すでに死にそうなんですけど? どうするんです? 死んじゃいますよ?
というか、状況証拠的にアンさん以外いない気がするんですけど? もはや殺人した場合の利点しか分からないですけど。もう疑い始めたら止まらない……