「ハッ! ハニートースト……!!」
「突然どうしたのよ美味しそうだから作りなさい」
「な、流れるように注文するのね。エウリュアレさん」
突発的に何かが舞い降りてきたオオガミの呟きを聞き逃さず、そのまま注文するエウリュアレ。
アビゲイルはそれを見て苦笑いになる。
それもそうだろう。まさか、敵地のど真ん中でこんな会話をするとは思わない。
「あぁぁ、いや、でも……食材も器具もない……」
「うぐぐ……私のハニートースト……! お願い、アビゲイル!」
「えぇぇ!? 本当にここで作るの!?」
「当然じゃない。それまで守りきるのが私たちの役目よ!」
「作り終えたら誰が守るんだろう……」
「そんなの、その時考えればいいわ!」
「それ、絶対私が頑張る事になるじゃない……!」
半泣きになりながらも、必要になるだろう素材を門を使って城から回収するアビゲイル。雑に放り込まれているが、落ちる前にオオガミが拾っているので問題ない。
「……パン一斤?」
「ナイスアビー! これでオッケー!」
「絶対大きすぎると思うのだけど! 本当に大丈夫!?」
「エウリュアレ用だし、よゆー!」
「エウリュアレさん用だと良いの!?」
「マスター。後で憶えてなさいよ?」
「ひぇ……」
エウリュアレの威圧に気圧されるオオガミ。
とは言いつつも、回収した食材や調理器具を整頓して、ようやく調理に取り掛かる。
「ふっふっふ。気合で30分で終わらせるね」
「15分で作って」
「んな無茶な!?」
「じゃあ20分」
「ぐぬぬ……気合で出来る範囲で頑張るぞオラー!」
張り切って作り始めるオオガミ。
食材や器具を回収していたアビゲイルはすでに疲れているような雰囲気だが、隣にいるエウリュアレが楽しみにしているのを見て責めるにも責められない。彼女自身も楽しみにしているので、尚更なのだが。
「あぁ、楽しみね。でもとりあえず、邪魔させない様に潰さないとよね」
「一人残らずこの先には行かせないわ。そのせいで私が取ってきたものを台無しにされたら困るもの」
「ふふふ。ハニートーストは誰にも渡さないわ!」
「トッピング用の食材が無かったことの恨みをここで晴らすわ!!」
お怒りなアビゲイル。事実、オオガミが手に入れた食材にはトッピング出来る物はほとんど無かった。
エウリュアレはそれを聞いて一瞬動きを止めたりしていたが、気にしない。
「ふ、ふふふ……ありえないわ。トッピング無しとかどうかと思うのだけど」
「……いえ、まぁ、一応アイスクリームとかは見つけたのだけど、それ以外は無かったって話よ?」
「そう……とりあえず、敵は全滅させておきましょうか」
「アッ……了解デス」
少し不穏なエウリュアレの笑みを見て、思わず片言になるアビゲイル。後ろではオオガミが張り切っているので、二人は防衛戦を始めるのだった。
女神さま、ブレない。とはいえ、どうやってトースト作るんだろう……予定していたカルナがいなくなったし……うむむ……