「いい加減、マシュと話せないのも辛くなってきた」
オオガミの言葉に、エウリュアレとアビゲイルが瞬時に反応する。
「どうするつもりなの?」
「うん。アビーなら行けるかなって」
「なるほど……私が要ってことね!」
むふーっ。と嬉しそうなアビゲイル。
エウリュアレは不満そうな表情なのだが、オオガミは気にしないことにした。
「それで、どうするの?」
「ん~……気合い?」
「気合いで出来る範囲を越えてる気がするのだけどっ!」
たまに無茶振りをしてくるオオガミに、半泣きになるアビゲイル。
一体どうしろというのか。アビゲイルは当然悩む。
「まぁ、本音としてはアビゲイルと一緒に門で帰れば良いかなって」
「でも、ここは放置?」
「いや、帰ってくるけども」
当然だと言いたげなオオガミ。
そんな予感はしていたので、二人は突っ込んだりしない。
とはいえ、誰もいなくなるのも問題なわけだ。
「ん~……通信出来ないかなぁ……」
「むむむ……ちょっと聞いてくるわね」
アビゲイルはそう言うと、門を開いて飛び込んでいった。
オオガミとエウリュアレは、それを見送った後、
「じゃあ、こっちはこっちで準備をしよう」
「……何の準備かしら?」
「食料を持ち帰る準備だよ」
ドヤ顔のオオガミ。確かにドラゴンの肉は量はあるが、アビゲイルが門で送れば良い話ではないのだろうか。と何時もの如く思うエウリュアレ。
だが、物はそれだけではないらしい。
「ほら、昨日仕掛けた罠を回収しにいかないと」
「あぁ……そうね。罠に掛かっててくれると嬉しいのだけど」
「まぁ、掛かってないときは掛かってないからねぇ……それはもう、運としか言いようがないや」
「それもそうね。じゃあ、確認しに行きましょ」
そう言うと、二人は罠を確認しに行くのだった。
* * *
日も暮れ、星がきれいに見える中、焚き火の灯りを囲むエウリュアレとオオガミ。
「意外と、捕れるものね」
「絶対普通じゃないと思うの」
罠いっぱいに入っていた魚。幸い罠自体があまり大きくなかったこともあり、そこまで量がないのが救いだろう。腐る前には食べきれそうだった。
「というかさ、内臓を取ってて思ったんだけど、これってほとんどオスじゃない?」
「あら。メスは少なかったの?」
「まぁ、かなり。凄い比率だよ。1:9くらい?」
「凄いわね。まぁ、それも運よ運」
「……まぁ、これくらいなら問題ないかな」
オオガミはそう言って、串に刺さっている焼けた魚を取ると、エウリュアレに渡す。
「まぁ、アビゲイルが帰ってくるまでは魚で生き残るか」
「今度は魚生活ね……」
そう言って、エウリュアレは遠い目をするのだった。
串焼き魚……うまそぅ……