「ふふん。もうたくさん倒してきたわ。エウリュアレさんは?」
「私はほら、貴方が来る前に倒していたもの。頑張ってね」
ドヤ顔で言ってくるアビゲイルに対して、
「……なんか、凄い負けてる気分なのだけど……」
「そんなわけないわ。ほら、まだ私の方が有利よ?」
「むぐぐ……!! っていうか、さっきから気になってたんだけど、マスターは?」
そう言って、周りを見渡すアビゲイル。
最近にしては珍しく、オオガミがエウリュアレの近くにいなかった。
「さっき一人でどこかに行ったわ。まぁ、探さなくても大丈夫だとは思うけど」
「えっ!? いや、一人だと危ないと思うのだけど!?」
「運が良ければ死にはしないと思うけど、そもそも私やノッブの攻撃を避ける様なマスターが簡単にやられるとは思えないのよね」
「えぇ……そんなになの……?」
「えぇ。わりと信じたくはないのだけどね。でも、事実なんだから仕方ないじゃない?」
「マスターの回避能力って、どうなってるのかしら」
エウリュアレが平然としている謎は解けたが、オオガミの性能に驚きを隠せないアビゲイル。
そんなことを話していると、遠くから大量の足音が聞こえてくる。
何事かと思ってその方向を見ると、
「ぃ~~~ゃ~~~~~~~だ~~~~~~!!!!! た~~~~~~~~~す~~~~~~け~~~~~て~~~~~~~!!!」
徐々に聞こえてくる聞きなれた声。
その後ろに見えるのは、竜骨兵に獣人、人面馬の群れだった。
礼装が無いから回転数で誤魔化そうとしているのが見え隠れしているように見えるが、ともかく、追われているのに変わりはない。
「あぁ、マスターはどうしてこう、いつも面白い事を引きつれてくるのかしら……」
「いや、面白がっている場合じゃないでしょう!? なんでそんな、さも自分は関係ないかのようにいられるのかしら!!」
「だってほら、私に直接助けを求められてる訳じゃないから、良いかなって」
「そんなバッサリ!? って、そんなこと言ってる場合じゃないわ! 早くどうにかしないと……!!」
「……別に、貴女が門を使ってどこかに送り飛ばしてしまえばいいと思うのだけど」
「……それもそうね!!」
そう言われ、即座に行動に移すアビゲイル。
真っ先にオオガミの真下に門を開いて自分の隣に落とすと、残りの追ってきている軍勢の真下に別の門を開き、かなり離れている場所へ超上空から落とした。
「ふぅ。これで一件落着ね」
「そうね。マスターはそこで沈んでるけど」
「……まぁ、助けられたのだし、問題ないわね!!」
結果良ければすべてよし。そう胸を張って言うアビゲイルに、エウリュアレは特に反論するでもなく見守るのだった。
エウリュアレは基本余裕の態度を崩さない。一部の状況を除いては……