「ついにこの時が来ちまったか……」
「うん……地獄の周回の時間だ」
絆ポイント。それは、もはや一周回ってサーヴァントを苦しめるものだ。
特に、幕間の物語に絆レベルが10必要だというサーヴァントにとっては。
「オレってば最弱だぜ? 前線に出たら瞬殺されるんだぜ? それでも連れていくつもりか?」
「当然じゃん? コスト的にも最適だしねっ!」
「えぇぇ……効率求めろよ~……そこで無理して使う理由作る必要ないだろ~?」
「ダメ。行く。絶対」
「子供かっ!」
「子供だっ!」
「ダメだったこのマスター!」
圧倒的手遅れ感。仕方無いだろう、こういうマスターなのだから。
だが、アンリとしては、なんとしてもこの場から逃げ出したい。周回に引っ張られていくなど、断固拒否である。
しかし、自称子供マスターがおとなしく逃がしてくれるわけがない。
「くぅ……逃げるにはマスターを気絶させるしかないか……!!」
「ククク……そんなの想定済みよっ!」
とりあえず蹴り飛ばす。という意思と共にオオガミの頭部を狙った正確な蹴り。だが、わかっていたかのようにしゃがんで避けるオオガミ。
その勢いのまま軸足を払われ、体勢を崩すアンリ。
転んだが最後、周囲から突然触手が現れ、両手足を拘束された。
「ナイスアビー!」
「チクショウ!! セコいぞマスター!! アビゲイルを連れてくるとか本気すぎるだろ!!」
「ふふふ。良い様ね、アンリ。そのまま頑張ってね?」
「クソッ! こいつ、一々オレの邪魔しやがる……!」
「まぁ、私はアンリがマスターに足払いを受けてそのまま倒れるとは思っていなかったのだけど……アンリ、意外と弱いの……?」
「オレだって想定外だわ!! いや、最弱だからしょうがないのかもしれないけどな!?」
「そう……じゃあ、やっぱりオモチャね」
「サーヴァントとしての尊厳っ!!」
触手はびくともしないので、もはや諦めのアンリ。
されるがままに簀巻きにされ、オオガミがそのまま担ぐと、
「よし。じゃあ、周回行ってくるね」
「頑張ってね、マスター」
「……えっ。このまま行くの?」
アンリの呟きはスルーされた。
平然と運んでいるものの、それなりに重いはずのアンリ。それを走って運べる辺り、相当力はあるのだろう。
ただ、一つだけ言いたいのは、ピンポイントで鳩尾に肩が刺さるのを止めて欲しかった。
「ま、マス、ター……さては、殺す気、だな?」
「えっ。何かした?」
急に止まるオオガミ。その反動で一際強く突き刺さり、焦点がぶれ始める。
「あ、あ~……運ぶなら、せめてもう少しゆっくりしてほしいんだが……鳩尾に肩が刺さる」
「えぇ……なんでそんな器用な……まぁ、分かったよ」
そう言うと、歩き出すオオガミ。走っていないので、衝撃がほとんど来なくなり、ようやく一息つくアンリ。
結局、周回で振り回されるが、後衛だっただけマシだろう。
アンリの幕間は……難易度高いんですよねぇ……後4つで挑めるんですけど、これが一番辛いんじゃないかと。