「あ~……マスター? マシュは完全に止め時を見失ってるみたいなんだけど。『先輩が助けを求めてこないんです』って言ってるし」
鈴鹿は、今元気よくカリバーンを避けているオオガミにそう報告する。
流石のマシュも、ここまでやる予定ではなかったらしい。どの時点でやりすぎだと思っていたかはさだかではないが。
オオガミはそれを言われて、何か納得したような表情で、
「そういえば、まだマシュ自身に助けを求めていない気がする……」
「それが原因なんじゃ……?」
「いや、まさか……確かに次の修行に移る時にマシュがすっごい微妙そうな顔をしている気がしたのは気のせいじゃなかったというのか……」
「うん、まぁ、そうなんだけどさ……平然と宝具を避けて行くのはどうなの?」
「緊急回避のおかげです」
「すっごい必中付けたいんだけど」
魔術礼装のおかげだとしても、完璧に回避されているのは複雑な気分の様だった。
そんな鈴鹿に苦笑いのオオガミ。
「ハァッ……ハァッ……い、一発も当たらないなんて……流石です、マスター。いや、たぶんオオガミさんは特殊な部類なのだと思うんですけど……」
「こんなマスターが普通だったら英霊が形無しじゃん?」
「なんという言われよう……こんなか弱いマスターに向かって何を言ってるんですか」
「か、か弱い……?」
「マスターのそれはか弱いとは言えないと思うんだけどなぁ……」
「なん……だと……」
自称か弱い系マスター。宝具の直撃を受けて生き残っていたり、そもそも宝具を回避したりするようなマスターはか弱いとは言えないだろう。
「それで、どうして宝具回避をしてるの?」
「あぁ、リリィの宝具が強くなるように、とりあえず撃って見てる感じ」
「ふぅん……それ、普通に宝具レベル――――」
「鈴鹿。それ以上いけない」
「えっ。あ、うん。分かったけど……まぁ、宝具威力って上下するよね。同じ条件で撃ったのに威力が違ったり」
「あぁ、それは確かに。あれ、どうしてなんだろうね?」
「魔力の収束量がまちまちだったりするからですかね?」
「一理あるよね。というか、話すなら普通に休憩にしよう。まだ宝具撃てそうにないでしょ?」
「す、すみません。流石に疲れてしまって……」
「魔力ごっそり持って行かれてるはずなのに、なんでこんな元気なのかなぁ。うちのマスター」
やはり人間ではないのかもしれない。実は魔力の塊だったりしないだろうか。なんて考えられたりもしているのだが、本人は気付いていなかったりする。
「まぁ、今は気にしなくてもいっか」
鈴鹿はそう言って、考えるのを放棄した。
なんか、英霊退去した辺りか本格的に人間辞めはじめた気がするオオガミ君。