「もしかして、俺が邪魔だった?」
「少しはあるが、影響は無いに等しかった。実際に重要だったのは貴様の確保だ。元凶だからな」
「僕もあまり状況を飲み込めてないけど、とりあえず、何とかなったみたいだね」
オオガミはキアラから強制的に引きずり出された後、今までのように吊し上げられていた。
隣では同じようにキアラも吊られているが、こちらはただただ笑顔を浮かべているだけだ。大変不気味である。
エルバサは不機嫌そうに。アーサーはなんとも言えない表情をしている。
その後ろでマシュとアビゲイルがこちらを見ていた。
「キアラを捕獲とか、良くできたよね」
「何を言っている。捕獲なんかしていない。大人しくなっただけだ。何をしたかは知らんがな」
「あぁ、うん。そこは本人に聞いてくれると助かるかな」
二人とも良くわからないようで、キアラが自分から捕まったこと以外分からない。
なので、仕方なく本人に尋ねることにした。
「えっと、なんで突然大人しくなったの?」
「当然ですわ。だって、あくまでも私はマスターが私に溺れるのを待っているのであって、戦うこと自体は目的ではありませんし……えぇ、マスターがいないのであれば、戦う理由もございません」
「……じゃあ、大人しく捕まっている理由は?」
「何をおっしゃいますか。大人しくしているだなんて、私の性に合いません。えぇ、えぇ。まずはお話でもいかがかと思いまして。戦うよりも、そちらの方がよろしいのでは?」
「うん、ダメだこれ。マシュ~。別室にして~」
「却下です」
「断固拒否よ」
マシュどころか、アビゲイルすら拒否してきた。
どうやら変態は変態に任せよう。一応マスターだし。というつもりもようだ。
「流石に相性悪いと思うんだよ。同族は同族でも、ダメな方の同族と言いますか。役違いですよこれ。どこぞの作家を連れてきて、任せた方がいいと思うんだけど」
「召喚させませんからね。先輩、余計なことをするのだけは人一倍なんですから」
「すっごい信頼の無さ。あまりにも凄すぎて泣きそうなくらいなんだけど」
「マスターはちょっと落ち着いた方がいいと思うの。その人を呼んだらダメだって言ったのに呼んでしまったんだもの」
「あぁ、うん。そこは言い訳できないなぁ……素直にごめんなさい。話題を変えよう」
話題を変えて逃げようとするオオガミ。
マシュは別に反省するとは思っていないので、あまり気にしていない様子。周りもマシュに倣って異論はない様子。
「アンリ、どうなった?」
「アンリさんですか……はい。未だ倒れてます」
「うぅむ、回復するのに時間かかるかぁ……イケニエ作戦はもう出来そうにないね。よし、諦めて犠牲になりますよ~っと」
「先輩が物分かり良いとか、明日は世界崩壊するんでしょうか……」
「ふふっ。現在進行形で崩壊しているのに、崩壊するだなんて。えぇ、見てみたいですわ」
「あんまり突っ込んじゃ行けないやつだこれ。か、解散! しばらく外で見張ってるように!!」
なんとなくダメな感じがしたオオガミは、マシュ達を追い出すことにしたのだった。
作家を召喚……すると、更にカオスになる予感。