「あっ」
その呟きは、平和を一瞬にして破壊する。
「アルターエゴ、殺生院キアラ。参上いたしました」
声だけで分かる。それは猛毒そのもの。今回、絶対に呼んではいけないサーヴァント第一位。人類悪そのものである。
金枠のアルターエゴまでは良かったのだ。だが、現実はこうだった。
運命とは、かくも殺意に満ち溢れているものだ。狙いは来ず、引いてはいけないものは引く。今回が一番良い事例だったかもしれない。
あぁ、だが、悲しきかな。学んだとしても、活かす場所はもう無いのだ――――
「(とか言ってる場合じゃねぇぇぇーーーー!!! マジでどうするんだこんなの!! マシュのお仕置きコースってレベルじゃねぇぞ!! 独房ひとりぼっちの刑だ死ぬ!! なんだよなんで今日に限って来るんだよこの人……!!)」
とにもかくにも、今はこの状況を打破することが先決。この危険物質を如何にバレないようにするかが重要――――
「マスター? またマシュさんに黙って召喚して――――」
「あっ」
「あら?」
目が合った。合ってしまった。
マシュの次にこの人と会わせてはいけない人物――――アビゲイルがそこにはいた。
刹那。アビゲイルは何処かへと走り去った。全力で。あまりにも焦りすぎて、門の存在を忘れているほどに。
「あらあら……何を逃げる必要があるのでしょう……別に、取って食べたりするわけでもないのに……」
「不穏。何か企んでる気しかしない」
「まさか。こんな状況で好き放題暴れるほど私は子供じゃありません。えぇ……人理焼却の次は人理凍結ですか……ふふ。これはなんとも、面白そうじゃないですか」
「……やっぱ危ないよこの人」
疑念は確信に変わった。ある程度改善されていても、根本はそのままだった。
解き放ったら危険でしかないので、何処かに投げ込んでおくべきだろう。となると――――
そこまで考えて、ふと思い出す。何処かへと走り去ったアビゲイルの事だ。
彼女は何処へ向かったのか。決まっている。マシュのところだ。つまり、キアラを召喚したのはすぐにバレる。結果、
「……あれ、詰んでね?」
「四面楚歌、でしょうか。ふふふ。これは存外、退屈しないで済みそうです。先程の少女も気になるところ……少し歩き回ってもよろしいですね?」
「よろしくないよろしくない。危険人物さんはそこで座っていてください。すぐにうちのやられ役連れてくるんで」
「あらあら。やられ役だなんて……一体、どんなお方なのでしょう?」
「……なんだか。アンリが一瞬で蒸発する気がしてきた……まぁ良いや、じゃ、動かないでね。今我が家のイケニエを呼んでくるんで」
「はい。行ってらっしゃいませ」
キアラの言葉を最後まで聞く前に全力でアンリを捕獲しにいくオオガミ。時間はもうほとんどない。マシュがたどり着く前になんとしてもアンリをイケニエにする必要があるのだった。
まさか出るわけない。そう思って回した結果がこれだよ!! アルターエゴだからリップ期待したのに!! メルトいないからもう引かない!!(吐血