「なんだか、凄い量ね。黒猫さん」
「燃やしたら面白そうなくらいだなぁ……燃やす?」
「……三千万QP」
「自重しま~す」
ぼそりと呟いたオオガミの言葉を聞いて、即座に謝るアンリ。
苦労してこの量を集めたのだ。燃やされるのは流石にやめてもらいたい。
「しっかし、これが全部QPに変わるのかぁ……持ち運び辛そうだなぁ……なんせ部屋一つ分。オレは持ち運びたくない量だ」
「私が門を使うからアンリがやらなくても大丈夫よ? 非力だものね?」
「おっと。温厚と名高いアンリさんも、ちょっと今のは悔しいかな? これはちょっと本気出すしかないかな?」
「勝手に人の思考にアテレコしてるアホマスターが代理だ。コイツなら余裕だろ」
「酷い!! アンリはそういうこと言うんだね!! それならこっちにだって考えがあるわけです」
そういうと、オオガミはどこからか概念礼装を取り出すと、アンリに投げ渡す。
「あ? なんだこれ」
「ターゲット集中礼装」
「はぁっ!? 殺す気かマスターテメェ!!」
「安心して。ちゃんと回復はしてあげるから」
「苦しめる気だコイツ!!」
いつものようにアンリを攻撃していくオオガミ。当然、後で報復されるのは目に見えているが、それはそれだ。報復をして、されてを繰り返し、互いの報復の精度は上がっていくのだから。
全くもって、嫌なサイクルである。
「それで? 黒猫を持っていくって話だっけ? 当然、やらないよ。だってほら、一気に持てないし、重いというよりかさ張るし、マンションの通路を通れるような大きさじゃないし。ここは素直にアビーの力に甘えよう……」
「……アビゲイルがもしいなかったらどうしてたんだ?」
「窓から投げ捨ててた」
「うっわぁ……効率良いけど損壊が酷そう……下にいた奴は悲惨だな……」
「下にいるのマンション霊とかそこら辺だし、お潰しても問題ないよねっ!」
「そうだな。運が良ければそのままランタンゲットだ。って、アホかコイツ!! 落下ダメージくらいで死ねばこっちは苦労しねぇっての!!」
「えっ……でも、この前骸骨が砕け散ったよ……?」
「……アンタ、どんな速度でぶつけたんだよ……」
マンションの8階から投げてぶつけたのだ。しかも、人形とはいえ魔力が籠っている物を。
軽くダメージが通ることもあるだろうが、流石に砕け散るのは少し異常だろう。一応魔力があるだけの一般人なのだが。
「なんつうか、今度マスターと一回模擬戦闘してみてぇんだけど……わりと攻撃が通じなさそう。なんせ、最弱英霊ですし?」
「えぇ~……英霊相手とか、流石に無理だと思うんだけどなぁ……まぁ、今度ね」
「おぅ」
そういうと、オオガミ達は少し休憩してから、黒猫を袋に積めていくのだった。アビゲイルに召喚してもらった後、交換してもらうときに持っていきやすいように。
貯まっていく猫……一気に交換するのが楽しみです。