「ねぇマスター。後どれくらいここにいられるのかしら?」
「そうだねぇ……後……今日入れて4日かな? でも、4日目の昼には帰れるはずだよ。もしかしたら他のところに飛ぶかもしれないけど」
屋上で寝転がり、星を見つつ話す二人。
屋上にいるのは二人だけで、残りは部屋で待っていた。本日の料理担当はマシュで、待ち時間に二人だけ屋上に来たのだ。
料理が出来たときは、アンリが呼びに来る予定なので、問題ないだろう。
「なんだか、ここが一番過ごしやすい気がするわ」
「ん~……まぁ、風呂とかトイレのことを考えると微妙だけど、それ以外は普通に色々揃ってるしね。快適なのは確かだね。うぅむ、日本……数多く渡ってきた中で、かなり過ごしやすいのは言うまでもない……このレベルで比べるのだとしたら、新宿かな……」
「新宿? それはどこにあるのかしら?」
「そうだね……うぅむ、口で説明するのは難しいから、今度日本地図を見ることにしようか」
「分かったわ。約束よ、マスター」
「当然。約束しなくとも見せるともさ」
そう言って、笑いあう二人。
日本地図を手に入れてないのが問題なので、車の中に戻れれば、荷物の中に日本地図くらい入っているだろう。
「それにしても、晩御飯なんだろうね?」
「何かしらね……でも、マシュさんは『健康料理を!』と言っていたわ。お野菜がいっぱいというのはちょっと考えたくないわ……」
「うぐ……内容によっては嫌な顔をしてしまうかもしれない……野菜大盛りかぁ……マシュ……栄養は偏り無く、かつ美味しいものをお願いします……」
「もしお野菜が山盛りで出てきたら、私、逃げるわ」
「令呪を使ってでも道連れにする」
「あ、悪魔だわ……マスターが悪魔のようだわ……!!」
見なくても分かるくらい動揺しているアビゲイル。
オオガミは一緒に逃げる側だと思っていたらしく、オオガミの言葉がまさに想定外のようだった。
「な、なんで逃げないの? 苦手なものもあると思うわ?」
「いや、だって、後でマシュに涙目で睨まれたら死ぬしかないし……」
「そこまでかしら……い、いえ、きっと理由があるのよね。たぶん、マシュさんは怒ると怖いのよ。えぇ、きっとそうだわ」
「うん。わりと怖い。結構前に、カルデアのテレビを半分ジャックしたBBが、画面が切り替わって数秒で捕縛されたのをみて、怒らせたら危ないって思ったね」
「えっ……BBさんって、何時だったかさりげなくいて、さりげなく消えていたあの人よね。あの人が数秒で縛り上げられるほどなの……? マシュさん、実はとっても怖い人なのね……!!」
「先輩? それ以上適当な事を言っていますと、晩御飯が無くなりますがいいですね?」
「あっ……マシュ……えっと、ごめんなさい……」
噂をすれば、という奴だろうか。いつの間にか近づいてきていたマシュは、とてもいい笑顔でオオガミの顔を覗き込んでいた。
オオガミは何も言い返すこと無く、ただ謝るのだった。
それを見ていたアビゲイルは、マシュは出来るだけ怒らせないようにしておくのが一番だと思うのだった。
うちのマシュは強い。主に精神力。
身体能力の差を考えないこの精神力ですよ。しかも、平然とオオガミ君を脅すこの強かさ……!! 敵に回しちゃいけない……