「マスター! まだかしら!」
「ちょっと待ってね~。っていうか、なぜ俺が料理担当?」
マンションの一室を無断で借りつつ、アビゲイルの要望であるパンケーキを作るオオガミ。
材料はアビゲイルとマシュを連れてスーパーまで。真っ暗だが、意外とやっているものだ。
すると、オオガミの様子を見ていた式が、
「お前、よくこんなところで平然と料理できるよな」
「そりゃ、三回、四回くらい冥界落ちしてたら、死の集まるマンションって言われても気にしなくなるもんだよ」
「へぇ、冥界を四回も。って言われても実感沸かないんだけどな。死後の世界を四回とか、なんで生きてるんだ?」
「さぁ? 冥界の女神と友達になったからかも?」
「女神と来たか。そりゃ、一度見てみたいもんだ。いるのか? そのカルデアって所にも」
「いたけど……再召喚できるまでは会えないかな。まぁ、アビーも、神を呼んでいるようなものだけど」
そう言いつつ、焼き終わった二枚のパンケーキを重ね、中心にホイップクリームを乗せた後、ハチミツをかける。
待っていたアビゲイルはそれを受けとると、
「ありがとうマスター! とっても美味しそうね!」
「どういたしまして。さて、式さんは何か要望はある?」
「いや、オレは要らないよ。腹も減らないしな。まぁ、そこのアイスでも食ってるさ」
「そう? じゃあいいか。マシュとアンリは?」
そう言って振り向くと、なにやら遠くを見ていた二人。
声をかけられて我に帰ったのか、慌てた様子でこちらを見る。
「あ、え、えっと、どうかしたんですか? 先輩」
「いや、食べたいものあるかなって。まぁ、材料もそんな無いから作れるものも少ないけど」
「オレは要らねぇぞ。あれだ、食欲がないって奴。そもそも、食料がそんなに無いのにこっちにまで回すなっての」
「ふむ。アンリは要らないっと。マシュは? 最低でもマシュも食べなきゃじゃん?」
「わ、私はそうですね……アビーさんと同じでも大丈夫でしょうか?」
「良いけど……大丈夫? 実質夜食で、甘いパンケーキというカロリーお化け作るけど」
「先輩。それ以上はダメです」
「あっ、うん。まぁ、うん。黙って作るよ」
視線に殺されたオオガミ。静かに調理を始めるのだった。
「あっはは! なんだお前ら。こんなところでも普通にふざけていられるとか、肝が据わってるな」
「ぐぅ……そ、そりゃ、マンション一つでビビるような神経してないよ。それなりに修羅場はくぐってるわけだし。そっちも同じようなものでしょ?」
「まぁ、そんなところかな。じゃ、オレは見回ってくる」
式はそういうと、部屋を出ていく。
オオガミはそれを見送ると、
「うぅむ、やっぱ、もう少し色々買ってくるべきだったか……アビーの要望しか聞かなかったのが問題かな」
「それ以前にも色々と問題があるような……?」
呟いたオオガミは、同じく呟いたマシュには気付かないのだった。
実はアビーがパンケーキを食べる話を書きたかっただけという。
殺式さん……性格よく分かってないので不安……崩壊してませんか……?