「オレ、もう二度とコイツとこんな作業しねぇ」
「私も、アンリとなんかやりたくないわ」
お互いに服や顔を汚しながら帰ってきたアンリとアビゲイル。
ただ、二人とも布面積がほとんど無いような服なので、体が煤で汚れているというのが一番のような気がする。
それを見て、オオガミとマシュは苦笑いで、
「お疲れ様。見てて思ったんだけど、そこまで喧嘩するなら半分ずつ担当すれば良かったんじゃない?」
「それだとアンリに攻撃出来ないじゃない」
「オレは逃げ回ってたんだっつの」
「対抗してたように見えましたけどね……」
「えぇ。お陰でこんなに汚れてしまったわ。これもアンリのせいよ」
「こちとら天井から地上まで真っ逆さまだったんだけどな。何度死ぬと思ったか……」
「なんで戻ってきても喧嘩してるのさ……」
もはや手の施しようもない。ただ、聞いている限り、アビゲイルが大体先のようだ。
「アビー。とりあえず、ちょっと自重しよう。具体的には、他の英霊が来るまで。そうしたら暴れていいから」
「もう。マスターったら……私は暴れないわ。アンリとは違うもの」
「おぅ。まさか遠回しにオレは暴れると言われるたぁ思わなかったわ。つか、コイツたまに性格違うんだけど、何? 多重人格なの? 面倒くさい系なの?」
「アンリ? それ以上は触手で圧殺されても何も言えなくなっちゃうよ?」
「うっそぉ……オレ、ちょっと言い返しただけで殺されんの? 理不尽~……やられ役も楽じゃないわ~……」
「気持ちは分かるけども。まぁ、皆が帰ってきたら、その位置にいるのはアンリじゃなくなると思うんだよねぇ……」
「はい。先輩の立ち位置ですね」
「あら。マスターも大変なのね」
「う~ん、一体何をしたというのか」
「ってことは……そのうちオレは部屋の隅で日がな一日観察してるだけで良くなるのか」
「ん~……まぁ、そうなるかなぁ……誰にも目をつけられなければの話だけど」
ぼぅっとしているだけだと、そのうち誰かが手伝わせるために引きずっていったりするのだが、それ知らないアンリはまだ平和なのだろう。
暇人は手伝いに駆り出される運命にあるのだ。
「なんか、その達観したような目が怖いんだけど……オレ、生き残れるか……?」
「大丈夫だと思うよ? 流石にエルキドゥも動かないだろうし。ただ、人手が足りないと捕まるんじゃないかなぁって。何の人手かは分からないけど」
「あ~、なるほど。手伝いに駆り出されるって事か……まぁ、それくらいなら問題ねぇな。うっし。んじゃあ、他のところも片付けに行きますかね」
やれやれ。と言いたげ感じで、アンリは歩き出す。
オオガミ達は顔を見合わせると、アンリを追いかけるのだった。
さて……苦労人ポジション交換は何時になるのか……帰ってきたときの反応はいくつか考えてるんですけど、実行できない……うぐぐ……