「ん~……平和だと思わない? アンリ」
「あ~……平和すぎてマスターの命狙ってみたくなるくらいには」
「反逆心というか、一種のボケなのか。どう取れば良いのか分からないそういうのはどうかと思う」
「意外と冗談だぜマスター」
「いくらか本気だったわコイツ」
バビロンの庭の端の方で、横になって青い空を見上げつつ、ちょっと本気の殺意を向けてくるアンリに苦笑いになるオオガミ。
近くでマシュに怯えつつもすぐに来れる範囲にランスロットがいるとはいえ、襲われたら一溜まりもないだろう。
「はぁ~……アンリはどうしてこう、殺意高めなのか」
「オレが高確率で殺されかかってるからだと思うぜ? 滅茶苦茶命狙われるし。具体的にはアビゲイルに」
「まぁ、アビーはねぇ……制御しきれない部分が多いし、しばらくはアンリがダメージ担当ということで。皆が帰ってきたらダメージ受けるの俺だし、しばらくはアンリが壁になってくれると助かるんだけどねぇ……」
「……宝具撃たれるんだったか」
「わりと普通に」
オオガミの感覚が壊れているような気がしなくもない。聞いているアンリは、どうしてそうなるのかが不思議で仕方がないのだが。
根本的に、宝具をそんな簡単に撃って良いのだろうか。と思うのだった。
「……ねぇアンリ?」
「あ? なんだマスター」
「平和なのは良いんだけど、暇になってきた」
「知るか。周回でも行って来ればいいだろ?」
「ん~……まぁ、ミルク終わってないから、理由はあるけども……」
「じゃあ良いじゃん。暇も潰せて、素材も取れて。一石二鳥だな」
「うぐぐ……ぐうの音も出ない……」
「んじゃ決まりだ。行こうぜマスター。周回が呼んでるだろ?」
「よ、呼ばれても嬉しくね~……」
ほとんど無限に周回するマラソン状態。チョコの生産は報酬が出なくなったのでもういいのだが、ミルクが終わっていないのが問題だった。
それさえ終わっていれば、一日中アビゲイルの受付姿を見ているのも良いと思っていたりするのだが。
「ぐうぅ……アビーの仕事姿を見るため、今日は頑張って周回するか……」
「おぅ。まぁ、素材を諦めるだけでサクッと終わるんだけどな」
「それは言っちゃいけないでしょ……諦めたら困るし。早く終わらせないとなぁ……期限はあるけど、早めに終わらせて損はないはず。その分宝物庫回ったり、アビーの仕事姿を見てたり出来るからね」
「あ~……ソウダナー。ソレデイインジャナイカー?」
なんとなく、これ以上は面倒だと感じたアンリは、雑に返事をしつつ、起き上がって周回に向かうのだった。
なんというか、ランスロット卿の存在感は薄くなっていく……不思議だ……