「頂上!! 頂上よマスター!!」
「うっはぁ~……オレ、何回死んだんだろ~……疲れたわぁ~……」
「現実を言うと、あまり死んでないアンリ。そもそもルーラーを相手にした時しか出てない。たぶん二回くらい」
「アンリ、案外タフなのね。もっとやられてたと思ったわ」
「この野郎……さりげなくオレを排除しに来てたくせに、平然とそんな事を……」
いつもの様に暗黒面が表面に出ているアビゲイル。
アンリはそんなアビゲイルを見て苦い顔をする。
「まぁまぁ。アビーもそんな悪魔の様な顔で笑ってないの。今度は降りるっていう最大の難関があるんだから」
「んなの、オレみたいに飛び降りりゃいいんじゃねぇの?」
「それはアンリだけよ。だから、アンリ。帰る時は飛び降りてね?」
「……アンタ、本当に性格悪いなぁ……」
「ふふっ。アンリには負けるわ」
「明らかにアビーの方が真っ黒……いや、これ以上はこっちの身まで危ない。しばらくは諦めてくれアンリ……」
アンリを見捨てるオオガミ。真っ黒な笑顔を浮かべるアビゲイルを止められるような力は無かった。
「おいおいおいおい。マスターに見放されたら、本格的に投げ飛ばされる奴じゃねぇかコレ……!!」
「フフフッ。分かってるのね。じゃあ、お望み通り、投げ飛ばしてあげるわ!!」
「だぁ~!!! やめ、ぐあぁぁぁ~~!?」
もはやお馴染みの光景になりつつあるアンリ投げ飛ばし。
今回のは流石に危ない気がしなくもないが、途中で展開された触手で温泉に向かって軌道修正されていたので、きっと大丈夫だろう。某ゲームの様に、落下ダメージが無かったり水に落ちれば落下ダメージが無かったりするわけではないが。
アビゲイルはやり切ったという表情をした後、触手を消していそいそと服を着始める。当然、オオガミは後ろを向いている。
「さて、どうする? アビゲイルも降りる?」
「ん~……もう少し星を見ていたいわ。だって、一番綺麗に見えるんだもの。屋根の上から見たら、もっと綺麗かしら」
「屋根の上かぁ……ちょっと寒そうだけど、それもありだね。行ってみる?」
「えぇ! 屋根の上なんて、お行儀が悪いかもだけれど、一度乗ってみたかったの!!」
そう言うと、アビゲイルは手すりの上に登り、ジャンプしていってしまう。
置いて行かれたオオガミは、弱体解除できる魔術礼装に変えてからゆっくりと登る。どこからかロープを取り出して命綱を作っているあたり、安全面に抜かりはない。
何とかして登り切ったオオガミは、すでに大の字で横になっているアビゲイルを見つける。
「どう? 綺麗?」
アビゲイルと同じように大の字に横になりつつ、オオガミは聞く。
「えぇ。星空が煌めいて、とっても綺麗だわ。月も強く輝いているし、本当に楽しい一日だったわ」
「それならよかった。楽しいなら何よりだよ」
「ん~……ちょっと肌寒いわ。でも、仕方ないわよね。屋根の上だもの。綺麗な景色が見られただけでも良かったと思わなくちゃ」
「そうだね。じゃあ、もうしばらく星空を見て、それから下に降りようか」
「えぇ。分かったわ」
そう言うと、二人は静かに空を見ているのだった。
ついに登り切って、そして暇になってしまった私……
難敵だったのは裏の70階と80階……90階と100階は割と余裕でした。90階はアビーとリップで殴り、100階は前からやりたかった魅了ハメでさっくりと終わりました。
えぇ、はい。ステンノ様は犠牲になりましたが(吐血