「うっひゃぁ~……二週目辛いわ~……」
「百階まで上がったら塔が消し飛んで登り直しとか、笑えるわ~。しかも、夜になってるから見難いわ~」
「もう。アンリはいるだけなんだからいいでしょっ! ねぇマスター? お星さまを見ない?」
「気を付けろよマスター。そいつ、窓の外に突き落としてくるからな?」
「アレはアンリだけ!! マスターを落としたりなんてしないわよ!!」
そもそも落とすな。と言いたいアンリだが、アビゲイルが聞いてくれるとは微塵も思っていないので、心の中で叫ぶだけにする。
オオガミはアンリの忠告を聞きつつも、アビゲイルに連れられて欄干に出て空を見上げる。
「ん~……ここだと、ちょっと見難いね」
「そうね。残念だわ……でも、下も綺麗よ。月光で見えるわ」
「確かに。やっぱり明るい時とは印象が変わるね……」
「暗くなっただけなのに、こんなにも変わるなんて。不思議だわ」
「アンリも見ない? むしろ、俺がいるから安全だと思うけど」
「いや、オレは後でいい。つか、今日はこれで終わりか? マスター」
「うん。今日はここで休憩。明日は五十階まで進むよ」
「うへぇ~……明日だけで三十階とは、やる気溢れてるねぇマスター。ボックスの時とは大違いだ」
「ものが違うでしょうが。アレは林檎爆食い大回転地獄。今やってるこれはサーヴァント縛り疑似単騎連続バトル。全く違う上に、こっちの方がやりがいがあるわけだよ。前に進んでいるのが明らかにわかるしね」
「あ~……うん、そうだな。マスターがある意味変人なのはよく分かった。まぁいいや。オレは寝るぞ~」
そう言うと、アンリは部屋の真ん中で大の字になって寝始める。
「マスター……私、もうちょっと空を見ていてもいいかしら?」
「良いよ。明日にはもっと高く登ってもっと見えるようにするから」
「まぁ。それは嬉しいわ。ありがとうマスター」
「どういたしまして。と言っても、まだたどり着いてないけどね。今日はまだ低いけど、我慢してね」
「二十階でも十分高いわ。でも、お昼の百階はとても高くて、地面がとっても遠く見えたわ。雲もとっても近かったし」
「楽しかったなら良かったよ。明後日までには攻略を終わらせるつもりだけどね。まぁ、取りあえず今日はもう寝ようか」
「えぇ。マスターがそう言うのなら、寝るわ。あぁ、明日が楽しみだわ」
アビゲイルはそう言うと、屋内に入って行く。
オオガミはふと、下の温泉を見て、
「終わったら、マシュを誘ってみるかな……」
そんなことを呟くのだった。
いやぁ……百階は強敵でしたね。そして、まさか本当にバラキーがゲームできるとは思わなかったの。私びっくり……