「さて。では、持ってこれなかった、完成予定だったノッブの発明品を紹介します」
「どうしてそんなことを……」
設計資料を持ち、満面の笑みで今にでも語りたそうにしているオオガミに、マシュが何とも言えない表情で聞く。
「私が頼んだのよ。もう一度召喚できたら、作ってもらいたいもの」
「なるほど……これは信長さんが大変な目に合うだけなのでは……」
悟ってしまったマシュ。しかし、隣で楽しみにしているアビゲイルはそんなことは気にしない。
「では、まず一つ目。移動型こたつ!」
「移動型こたつ! 何かしらそれは!! どんなものなの?」
「アビゲイルさんが来た時にはカルデアごと持って行かれましたもんね……というか、なんでそんなものを作ってたんですか……」
「年末のイベント兼実用の為に作ってもらってたんだけど、片手間だから時間がかかった上に年末に起こされた事件のせいで粉々ですよ。で、こたつだね」
オオガミはそう言うと、資料を見せる。
それには、こたつの形と、走行方法まで書いてあった。
「まぁ! こたつと言うのは、机に布団が合わさってるものなのね! 暖かそうだわ!」
「なんですかこの、変形するっていうのは。どうしてあの人は変形させたがるんですか……」
「さぁ……? なんか、高確率で変形するよね……いや、たぶん印象が濃いのが変形するだけだね。うん」
「BBさんは変形させませんよね……なんでしょう……何かあるんでしょうか……」
「ん~……原因は何処だろう……ロボット物アニメを見せすぎたせいかな……」
「おおよそそこかと。というか、犯人分かり切ってるじゃないですか」
犯人特定。やはりオオガミだった。
「ねぇマスター! 他にはないのかしら?」
「そうだね……じゃあ、第二弾! ワクワクスロットル!!」
「それ、CCCの時に一番地味に苦労した奴じゃないですか!!!」
「何かしら? これは一体どういうものなのかしら?」
どこかで見たことのあるスロットマシン。
絵柄はタライだったり落とし穴だったりしているが、この悪意に満ちているスロットマシンは、やはり見覚えがあり、地味な嫌がらせや、逆に嬉しいことをしてくれたりしたマシン。
「このスロットはね。揃った絵柄の事象が、狙った人物に自動発動するというスロットだったんだよ。ちなみに、年末のイベント内イベント用アイテムということだよ」
「これ、言っちゃって大丈夫なんですか……? 次の年末に使えます……?」
「まぁ、無理だろうけども」
「……信長さんとBBさんが必死で頑張ってたのを無に返すとは……先輩、酷いです」
「まぁ、作りかけの物も丸ごと消し飛んだし、許されるはず」
許されそうにないが、実際に罰を受けるのはオオガミなので、あえてマシュは何も言わないのだった。
「マスター! もっと教えてちょうだい!!」
「うむ! 知ってる限りは教えるとも! じゃあ次は――――」
そう言って、オオガミは次々と教えていくのだった。
なお、一応自分が提案したものしか暴露していないので、おそらく最低限の罰で済むはずだと、オオガミはたかをくくっているのだった。
今年末に持ち越せばまだ使えそうなアイテムですけど、正直スロットマシンは持て余しますって。無理ですよこれ。
ただ、移動型こたつはちょっと欲しい。扉に突っかかって動けなくなりそうですけど。