「さて……マシュ。かわいい後輩ちゃんよ。俺は一つ、困っていることがある」
「どうしたんですか先輩。突然そんな誉め言葉を言って。私は今すごく気分がよくなったのである程度なら答えますよ」
「うん。じゃあ、このスマホに見覚えある?」
独房となっている謹慎室で、マシュと向かい合っているオオガミが、持っていたスマホを見せる。
マシュは首をかしげ、思い出そうとするが、全く思い出せない。というより、初めて見たというのが正しいだろうか。
「いえ、ありません。先輩のでは無いんですか?」
「俺のは別にあるんだけども、これはマイルームの棚の中にしまわれてたんだよ。しまった記憶は無いし、何よりも見覚えがないから悩んでたんだけど、これ、どうしようか」
「職員の誰かの物……って事は無いですもんね。先輩の部屋に行く理由がありませんし」
「うん。だから、サーヴァントの誰かのかなって思ってるんだけど、そんな現代的な人はいなかったような……勝手に見るのもどうかと思うし」
「先輩の部屋に仕舞ってあったのなら、むしろ意図的に置いていったのではないでしょうか。私は見ても良いと思うんですけど……」
「まぁ、それもそうか。それじゃあ、見てみるか……」
二人は恐々としながらも好奇心のままに、スマホの電源を点ける。
どうやらスリープモードになっていただけのようで、電源ボタンを軽く押すだけで点く。
ロック画面は真っ黒で、時間だけが表記されているという、初期状態のままで、暗号などによるロックも掛かってない。
不用心だな。と思いつつ解除すると同時に、画面がいきなり横向きに代わり、ピンク色に染め上げられる。
「おぉぅ。いきなりビックリした……なにこれ」
「あれ……この演出、どこかで見たような……こう、これを止めるためにどこかに乗り込んだような思い出が……」
「……あぁ、つまり、これは――――」
『BB~~ッ!! チャンネル~~!!』
――――つまりは、そういうことなのか。
冷静に考えれば、うちのカルデアにはエンジニアがいたではないか。しかも、かなり優秀な方の。
あの二人ならやりかねないな。と思い、冷静に電源を切る。
『ちょ、なにするんですかセンパイ! せっかくBBちゃん自ら落ち込んでいるはずのセンパイを心配して、こんなアホみたいに電池を喰うアプリを作ったって言うのに。なんですか。お前は望んでないってことなんですか? ハッ! もしかして、BBちゃんが残っている嬉しさとBBちゃんの丹精込めて作ったアプリに感動しちゃって言葉も出ないんですか? 嫌ですねぇもう。あれだけ一緒にいたのにそんな反応されると困っちゃうじゃないですか~。戻ったらたっぷりと可愛がってあげますからね。セ・ン・パ・イ(はぁと)』
「センパイ。このスマホを今すぐ叩き割りましょう」
「うぅむ、賛同したいけどちょっと待とうよマシュ。執行猶予付きだよ」
「無期懲役でカルデアの奥底に封印するか即刻死刑で粉砕で良いかと」
「BBに対して本当に殺意溢れてるね我が後輩ちゃんは!」
消した瞬間に問答無用で点けられた電源と、怒濤の長台詞により、瞬間的にマシュは殺意を向けるのだった。
オオガミはそんなマシュをなんとかなだめ、スマホを静かにベッドの下にしまうのだった。
ツイッターで見て、思わず書いてしまった……これ、怒られたりしないですかね……めっちゃ不安なんですけど……