「ふむ。これもおいしいわね…」
「何を食べているんだ?」
竹串を片手にモグモグとしているエウリュアレの正面に、巌窟王が座る。
「三食団子っていう和菓子よ。今週までだから食べてみたのよ」
「和菓子…という事は、日本の物か。今は確か、春……だったか」
「らしいわ。信長とかがいれば教えてくれたと思うんだけどね」
「もう三食団子は遅いがな。桜も散って、そろそろ柏餅や
「ほぅ…? そんなものもあるのか」
「私も食べてみたいわね…」
普通に巌窟王の隣に座る土方。
二人は彼の言葉に反応する。
「俺は湯漬け沢庵だけあればいいがな」
「そう? それはもったいないわね。こんなにおいしいのに」
「だな。食べた方が良いだろう」
「いらん。湯漬け沢庵で十分だ。まぁ、沖田なら食べてそうだがな」
「残念。このおいしさを共有できないなんて…!」
「する気も無いだろう。先ほどから俺に取らせる気が全くないだろうが」
エウリュアレはいつの間にか取ってきていた三食団子の山を、巌窟王に取られまいと、巌窟王が手を伸ばす度に避ける。
「私は女神よ? 何かを欲するなら、何か貢ぎなさいな」
「クッ……いや、別に、自分で取ってくればいいだけの事だ」
「そう? 面白くないわね。もうちょっと食い下がってくると思ったのに」
面白くなさそうにエウリュアレは巌窟王を見送り、団子をモグモグと食べる。
「うぅん…まぁ、良いわ。食べ切れる気がしないから、後で誰かに押し付けましょ」
「押し付けんな。自分で取ったものは自分で喰え」
「むっ。別に、私は一人で食べるために取ったんじゃないわ。他にも誰かが食べるんじゃないかと思って、取って置いたのよ」
「ふん。どうだかな」
「何よ。やる気? またあの時みたいにメロメロにして射ち殺すわよ?」
「良いだろう。やってやろうじゃねぇか」
だんだんと不穏な雰囲気が流れる休憩室。土方とエウリュアレのにらみ合いは、何時の間にか握られているそれぞれの武器が更に緊張感を増やす。
しかし、それを破る一言。
「二人とも……ここで争うつもりかい?」
冷たい言葉。無機質ともいえる警告。
エルキドゥ。対神性で、ただでさえもアーチャーに強い彼は、その鎖を態々見せ、殺意のこもった威圧感を放つ。
「私は別に、争うつもりなんてないわよ」
「俺も別に、やり合うつもりはねぇ」
「そう…ならいいよ。皆に迷惑をかけないようにね」
一触即発の空気は、エルキドゥの一言によって霧散する。
「……とりあえず、あいつにコレ、押し付けましょう」
「さすがに無謀だろうが」
「止めておけ。結果は見えている」
エウリュアレの無謀な作戦は、土方と戻ってきた巌窟王により実行前に終わり、仕方なく三人で三食団子を食べるのだった。
ちなみに、巌窟王は緑茶を取りに行っていただけである。
ついにノッブもマスターもいない話ができるという。しかし、代わりにエウリュアレがお菓子を求める系のキャラに変わってしまった…犠牲は大きかった…