「エルダーグールだっけ……あれ、どっかで見たことあるんだよね……違う名前で」
「またですか? マスター」
庭で空を見上げながらふと呟いた言葉に、玉藻が怪訝な目で見てくる。
今の時間帯は皆眠いのだろうと思うのだが、狐が夜行性だからだろうか。たいして辛そうでもない玉藻。
ナーサリーは既に就寝済みで、マーリンはどこにいるのか分からない。ネロは屋根の上で見張ってるのだろう。
「まぁ、大したことじゃないけどね。ただ、なんとなくこの違和感が拭えなくて。まぁ、きっとグールなんだろうけど」
「そうですねぇ。私も気になりますけど、それはそれ。今は目前のことに集中しませんと。マスターがカルデアに帰れなくなったら困るのは、マスターだけじゃないんですよ?」
「分かってるよ。ナーサリーと昔遊びをするって言ったしね。意地でも帰るよ」
「えぇ、そうしてくださいね。私も、まだ遊んでないんですから」
「当然。昔遊びは玉藻から提案したんだからね。逃がさないよ?」
「まぁ。それは怖いですねぇ。では、私も生きて帰らないといけないですね」
ふふふ。と笑う玉藻。オオガミも釣られて笑うと、
「やぁ。面白そうな話をしているね?」
「うわっ、マーリン」
「貴方こそ何をしているんですか……大人しくアヴァロンに引きこもってても良いんですよ?」
「中々手厳しいなぁ。これでも貢献してると思うんだけどね?」
「じゃあ、その胡散臭い雰囲気をどうにかしてくださいませ」
「おぉっと。それはどうしようもないと思うんだけどね?」
「なんで突然不穏な雰囲気になってるのさ。はい、終了終了」
そのうち噛みつきかかりそうな玉藻と、爽やか笑顔で受け流すマーリンの間に割って入るオオガミ。
「全く。どうしてそうなるのさ」
「なんとなく、こう、みこーん! と警戒レベルが上がったので。なんというか、ポジション的な意味で」
「もう既に何度か同じポジションに立ってる気がするけどね? 高難易度の時は大体一緒じゃないか」
「そう、それです。どうしてこんなのと一緒なんですか。私一人でも問題ないでしょう?」
「いやいや。マーリンは強化とスター生産。玉藻は回復と宝具回転率だから。分野がちょっと違うのよ」
「奇しくも相性は良いってことさ。諦めて受け入れた方がいいと思うんだけどね?」
「うぐぐ……確かにバスターアタッカーに対応できますし、良いことの方が多いですけど……それはそれですよ。この人、ずっと王の話ばかりじゃないですか!! どれだけ語りたいんですか!!」
「宝具がこれなのだから仕方ないだろう!?」
「まぁ、高難易度やる度に聞いてると、飽きてくるよね。もう少しアドリブがあってもいいと思う」
「マスターもかい!? アドリブと言ったって、君だって同じようなものだろう。高難易度に関わらず、今回だってずっとしなくてもいいであろう詠唱をしているだろう?」
「あれは気分の問題なんですぅ! ルーティーン的なものですぅ!!」
「うぅん、どっちもどっち……よし。もう寝ようよ二人とも。夜遅くまで起きてるものじゃないよ」
眠くなって対応が面倒になったのか、寝ようと提案するオオガミ。
言い合っていた二人はそれで静かになると、互いに目を合わせ、
「仕方ないですね。今日はこれくらいにして、寝ましょうマスター」
「僕はネロと代わってくるよ。じゃあ、おやすみ。マスター」
マーリンはそのまま花に紛れて消え、玉藻はオオガミの手を引いて寝室へと向かう。
オオガミはふと思った。
「(結局、マーリンは何をしに来たんだろう?)」
真実は、誰も知らない。
ふと、セイレムの最中にこんな会話をしているのかと考えると、二人が死ぬんじゃないかと不安になった……
いや、この二人はそうそう死なないはず……(フラグ?