「先輩。ケーキと靴下はどれだけ集まったんですか?」
「ん? あぁ、後プレゼントボックスを二箱開けて、チーズケーキとショートケーキは二種類――――800個ほどで終わるよ」
「……フルーツケーキとブッシュ・ド・ノエルは?」
「……さぁ?」
バラキーの口元にクッキーを近付け、反応したと同時に腕を引っ込める遊びをしているオオガミに聞き、そんなふざけた反応が返って来た。
当然、マシュは笑みを浮かべながら首をかしげ、
「先輩? 今日中には終わる予定だったと思うんですが?」
「かわいい後輩ちゃんよ。残念だが……予定は変更されたよ」
「……先輩? 私、そろそろエルキドゥさんを呼んで来ますよ?」
「かわいい後輩ちゃんが悪いことを考えるようになってる……!! 誰ですか! うちのかわいい後輩ちゃんをこんなにしたのは!!」
「いい加減、自分のやったことが返ってきたって気付かないのかしら。このマスター」
「因果応報じゃよね!!」
がぶり。とバラキーに腕ごと食べられ、動けなくなるオオガミ。
自分でやった悪戯で動けなくなっているので、誰も責められないオオガミは、如何にしてマシュの怒りを納めようか考える。
そして、出した結論は、
「あの、えっと……素直に行ってきます!」
下手に言い訳せずに、早く行った方が良いという結論に至る。
最近はノッブ達のお陰か、マシュはどんどん立派な良い子に育ってきている。風紀委員側として。
なので、下手に逆らうと、天の鎖が飛んできたりするわけだ。彼女達のボスは恐ろしかった。
まぁ、マシュの説教も、かなり心に響くのだが。
「信長さんも、あまり先輩の事は言えない気がするんですが……因果応報なら、たぶん貴女の方がそのうち大きいのが来ますよ?」
「……儂、死ぬんかのぅ……」
「殺しても死なないくせに、よく言うわよ」
いや。流石の儂も、死ぬときはアッサリじゃから。と、妙なところに突っ込むノッブ。
エウリュアレもそこじゃない。と言いたげな表情だが、本人は何故かドヤ顔なので、言うことはない。
「……吾のクッキー……持っていかれたのだが」
ふと声が聞こえ、視線を下げると、そこにはショボくれているバラキーがいた。おそらく、オオガミが逃走時に持って逃げたのだろう。
エウリュアレはそれを見て、
「じゃあ、私のティラミス、食べる?」
「むぅ? ……食べる」
エウリュアレに差し出されたスプーンの上のティラミスをまじまじと見つめ、恐る恐ると言った感じで口にする。
「う、む……少しばかり苦いが、しかしそれ故にその後の甘味がしっかりと届き、しつこくないようになっている……」
「……つまり?」
「うまい!」
「どうしてそこで語彙力を落とさせるのよ」
「端的に伝えた方が良いと思うてな。こう、長いのは聞いてて途中から頭に入ってこなくなるからな」
「そんなものかしら?」
ノッブの言葉にそんなものだろうかと思うも、バラキーが満足そうなので、まぁいいか。となるエウリュアレ。
「じゃあ、これでさっきオオガミやってたの、やりましょう?」
「なっ……そんな……!!」
「うふふ……私はサーヴァントだし、オオガミよりも難しいわよ……?」
不敵に微笑むエウリュアレに、カタカタと震えるバラキー。
マシュとノッブは、そんな二人を横目に、
「エウリュアレさん、たまにたまに先輩の事を名前呼びするんですが、何故なんでしょうか?」
「うぅむ……儂もたまに聞くんじゃが、気分の問題なのかのぅ……法則性は……見つけるのにもう少し時間がかかりそうじゃよ」
「そうですか……私の方でも少し調べてみますね」
「うむ。とは言っても、見つけ出しても別に何かある訳じゃないと思うんじゃけどね」
そう言って、楽しそうに遊ぶエウリュアレを見るのだった。
エウリュアレがオオガミを名前呼びする条件……あるんですかね……?
本当にあったら、無意識でやってることになるんですが……