「凍りそうなほど寒い大地を踏みしめて。いざ行かん、海!」
「さ、寒いわね。マスター……」
「トナカイさん……私も寒いんですが。寒いんですが!」
迫る二人に苦笑いを返すしかないオオガミ。歩きにくいとは決して言えない状況に、とりあえずされるがままでいるしかない。
しかし、暴風雪の中で歩き続けるのは流石に体力的につらいものがある。
「サンタさん。どこかで休憩しませんかね」
「もぅ! トナカイさんがそんなでどうするんですか!! もっとしっかりしてください!!」
「なんと……休ませてくれないとは……この暴風雪の中、死ぬんじゃ……」
「大丈夫!! 死んだら私たちが弔ってあげるわ!!」
「安心して眠ってください!!」
「うん。死ぬ前提になってるね……死なないようにせねば……」
当然冗談なのだろうが、彼女たちの場合本当にやりかねないので、困ったものだった。
「それで、マスターは疲れたの?」
「ん~……まぁ、寒いしね。どっかで休憩するのが一番かなぁって。暗くなっていってるしね。二人はともかく、僕は見えないからね……」
「トナカイさんなのに夜目が効かないとは……」
「トナカイさんもできないことはあるわ! サンタさん!」
「う、うぅ……それを言われると、確かにトナカイさんは人間ですし……」
「そうよ。だから、これだけ暗いと見えなくても仕方ないわ」
「そうですね……じゃあ、どこかで休めるところでも探しましょうか」
「えぇ!」
二人はオオガミの手を引いて歩き出す。
オオガミは二人の言っているようにほとんど周りが見えていないので、今なら目の前に木が迫ってきていたらぶつかれるだけの自信があった。
「ねぇ、木とか気を付けてよ? ぶつかったら痛いんだからね?」
「わかってるわ! ちゃんと避けるから安心して!!」
「木々の間を走り抜けるくらい、サンタ的に当然です!!」
二人がそういった直後だった。
ドゴッ! と音がして、何かに後ろへ引っ張られるようにその場に座り込むナーサリーとサンタジャンヌ。
振り向くと、木に叩きつけられているオオガミの姿があった。
「トナカイさん!?」
「あ~……やっちゃったわ。左右から引っ張っているんだもの。同じ方向に避けなくちゃいけなかったわ」
「……いひゃい」
地面に倒れ、雪に埋もれながら悶絶するオオガミ。ナーサリーはそれを見て反省し、サンタジャンヌは大慌てでオオガミに近づく。
「あ、あの、トナカイさん! 大丈夫ですか!?」
「うぅ……地味に鈍痛は続いているけど、問題ないよ。とりあえず、見えないのは変わらないから引っ張っていってくれると助かるな」
「わ、わかりました!! 任せてください、トナカイさん!!」
「むぅ。私も忘れないでね!!」
二人はそういうと、オオガミの腕を掴み、再び歩き出すのだった。
ジャックちゃん出したいのに……!! 持ってないから……!! うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!