「マスター。下姉様は今日はどうしたんですか?」
「ん? あぁ、エウリュアレは今ノッブの所だよ。遊びに行ってるからね」
「そうですか……いえ、何かあったというわけでは無いんですけどね。マスターがいるのに見えなかったので」
「そんなに一緒にいるイメージある?」
「えぇ、かなり」
「マジですか……?」
休憩室で休んでいたところでメドゥーサに言われ、首をかしげるオオガミ。
無自覚だったのだろう。メドゥーサに言われて、そんなに一緒にいるのかと考える。
そうして思い出してみると、ここ最近ずっといる様な気がする。というより、ここ最近はずっとオオガミの部屋でお茶会を開かれ続けているような気もする。
後、何時の間にか部屋に侵入されているのは今も謎である。清姫と静謐、頼光の侵入は無いのに、これは一体どういうことなのかと考えるが、冷静に考えると、監視役がノッブなので、エウリュアレがスルーされるのも当然なのだろう。
「いや待て。絶対関係ないでしょ。どうしてスルーしてんねんノッブ。そこは止めようよ流石に。まさか、共犯……?」
「マスターの部屋に侵入するメリットが分からないのですが……?」
「うん。それは俺も思うよ。一体侵入して何してるんだろ……」
「不思議ですね。まぁいいです。じゃあ、私はこれで」
「あぁ、うん。じゃあね~」
メドゥーサが部屋を出ていくと、ふと、休憩室の奥の方が賑わっていることに気付く。
何事かと思い目を凝らしてみると、そこにはマーリンが。
近づくのもどうかと思ったオオガミは、聞き耳を立ててみる。
「――――そうして、二人は末永く幸せに暮らした。めでたしめでたし。さぁ、これで今日の話は終わりだよ。解散解散」
「マーリン。今日もお話ありがとう!」
「吾はあまり興味ないのだがな……鬼がいっぱい出てくるような話はないのか」
マーリンの話を楽しそうに聞いていたナーサリーと、どこか不満そうな茨木。
オオガミはそれを遠巻きに見つつ、ミニパンプキンシュークリームを食べる。なお、美味しかったので、エウリュアレに渡しに行くついでにノッブにも差し入れようと思うのだった。
「そう言われてもね……あぁ、桃太郎の話でもするかい?」
「それだと鬼は殺されてしまうであろうが!!」
「序盤だけ見ればかなり頑張ってるように思えるけどね?」
「何よりも気に食わぬのは、犬、サル、雉にやられるのが分からぬ!! 桃太郎はあれか!! 動物会話を持ってる上に指揮能力も高いのか! どうやってあの三匹で鬼の群れを翻弄するというのか!! というより、鬼も鬼だ! どうして人間一人と畜生3匹に負けるのか、てんでわからぬ!!」
「指揮系統が壊滅的だったというか、そもそも宴をして酔いつぶれてるところへの奇襲だったような……?」
「吾等と同じような理由だった!! すまぬ。だがやはり酔っぱらっていたからと言って、そこまで やられるものか!? 桃太郎とやらが頼光並みに強いのなら分かるがな!」
「動物三匹仲間にして鬼の拠点に乗り込めるほどよ? 弱いわけないじゃない。それに、もしかしたら連れていた動物も、ただの動物じゃないのかもしれないわ」
「恐ろしいのだが! そんなもの、恐ろしいのだが!!」
桃太郎は鬼の視点からでも、中々恐ろしい事らしい。それはもう、恐怖の代名詞である鬼が、犬と猿と雉にやられるのだ。訳が分からないと思うのも無理はないだろう。
そんな話を聞きながら、オオガミはミニパンプキンシュークリームを箱に入れて持って行くのだった。
このマスター、行動基準がエウリュアレな件。もうエウリュアレに洗脳されてません?
しかし、桃太郎は、今にして思えば中々強い……あのバカみたいに強い鬼を三匹の動物と一緒に倒したんですし……人じゃないでしょあれは……