「さて…どうしたものか…」
「どうしたの? マスター」
種火を前に悩んでいるオオガミを見つけたナーサリーが声を掛ける。
「ん?あ、ナーサリーか。いやね? 今日の種火を周回してきて、アサシンの種火が出たんだけど、静謐ちゃんは再臨素材が足りなくて止まってるし、かといって他のアサシンを育てると手が回らなくなりそうだから、どうしようかと思って」
「ふぅん? じゃあ、今からその再臨素材を集めにいけばいいのよ。そうすれば問題ないわ。どう?」
「あ~…それもそうか…でもなぁ…鎖があと15個なんだよなぁ…」
「大丈夫よ。私がいるじゃない!」
ムフーッと胸を張るナーサリー。それを見て、オオガミは微笑みながら頭を撫でると、ナーサリーはされるがまま嬉しそうにする。
「ん~…しかし、それでもAP不足は変わらんか…」
「なら、アステリオスを育てなさい」
「えっ?」
突如響く声。振り向くと、そこにはエウリュアレがいた。
「えぇ、えぇ。アステリオスを育てるべきよ。それが最良よ」
「えぇ…アステリオス? でもなぁ…アステリオスはバーサーカーだし…」
「いいじゃない。ヘラクレスだって、最終再臨したでしょう? なら、次はアステリオスを再臨させるべきよ」
「えぇ~…」
エウリュアレに押され気味のオオガミ。しかし、そこに助けが来る。
「ダメよエウリュアレ。マスターが使いたいように使うのが一番よ」
「あら。貴女、女神である私に逆らうの?」
「女神だからって、マスターの考えを無視しちゃダメよ!」
「何言ってるのよ。いい? 私はサーヴァントだけど、あいつのマスターなのよ?」
「何を言ってるのよ! マスターにマスターはいないわ!」
「ぐぬぬ…聞き分けの無い子ね…!」
「女神に言われたくないわ…!」
「どういう意味よ!」
「女神はいっつも物語で悪いことしかしないじゃない!」
「言ってくれるわね、この絵本!」
「もう女神なんかに負けないんだから!」
いつの間にか喧嘩の方向がずれてきた二人。
オオガミは諦めて種火を持つと、静かに倉庫に放り込む。
そして、
「ナーサリー。エウリュアレ。とりあえず、一時休戦して何か甘いもの食べない?」
「むぐっ! 私、パフェがいいわ!」
「ぬぐっ! 私はケーキがいいわ!」
「よしよし。じゃあ、行こうか」
三人はそう言って、騒ぎながら食堂に向かうのだった。
「ところで、鎖集めにはいかないんですか?」
「せ、静謐ちゃん…!」
途中で件の静謐のハサンに状況を知られ、付きまとわれたのは余談だろう。
このあと結局鎖は集めなかった。
家のエウリュアレとナーサリーは、唯一聖杯を使わない最終レベルに到達済みなので、この組み合わせなのでした。