「マスター。ちょっとお願いがあるのだけど…」
服の裾を軽く引かれ、ナーサリーにそう言われたのが5時間前のことだった。
* * *
「で、それで儂らが呼ばれるわけが全く分からんのだが」
「同意だわ。というか、その依頼は私が作ればなんとかなるじゃない」
「メディナリならそう言ってくれると思っておったぞ!」
「だからメディナリって呼ばないで!」
ノッブの言葉に悲鳴を上げるメディア。
「茶々は楽しいなら良いよ!」
「アタシも構わないさ。部屋で燻っているより、外に出た方が良いからね」
茶々とドレイクは楽しそうに笑う。
「それで、僕たちは何をすればいいんだい?」
「任せるがいい。俺はお前の願いを叶えよう」
エルキドゥは依頼の内容を聞き、巌窟王は不敵に笑う。
「先輩。全員集まりましたよ」
「うん。じゃあ、話を始めるよ」
マシュの言葉に答えるようにオオガミは話を始める。
「今回はノッブの収集が目的だよ。ちびノッブとか、ノブ撰組とかだね。目指すは全種制覇。期限はイベント終了までだよ! じゃ、作戦開始!」
「作戦内容は一切語ってないんじゃが!?」
ノッブの適切な突っ込みにオオガミのセリフに思考が停止していた全員がハッと我に帰る。
「せ、先輩。流石にアバウト過ぎませんか…?」
「本当に滅茶苦茶ね……そもそもどうやって捕まえろって言うのよ」
「え? そりゃ、素手でこう…」
普通にオオガミが人形を持ち上げるようなジェスチャーを取る。
「いやいやいや。待て。待つんじゃマスター。あれはそんな単純なものじゃないから。そんなことしたらすぐさま爆発するぞ」
「そうだね。あれはそんな捕り方じゃ捕まえられないはずだよ。とりあえず、僕が色々と試してくるよ」
そう言ってエルキドゥが行こうとしたとき、
「茶々がいっちばーん!」
「これでいいのか?」
茶々と巌窟王が、さも当然のようにちびノッブを捕まえてきた。
持ち方は茶々が両手で抱き上げるように。巌窟王が、服の襟を掴んでいた。
「おぉ。ほら、捕まえられるじゃん!」
「なんじゃと…? そんなわけ…」
「どうやって捕まえたのかしら。私もいくつか試してみましょうか…」
ノッブは驚愕の表情を浮かべ、メディアは真剣に考察する。
「それで、そいつらをたくさん集めれば良いんだね?」
「そうみたいだけど…いや、でも、どうやって捕まえたんだ…?」
ドレイクは実物を見て意気込むのとは反対に、エルキドゥは疑問を浮かべる。
「よし。じゃあ、このノッブに似た感じのを探して捕まえてきブホァ!」
巌窟王から受け取り、皆に見えるように高く掲げようとした途端爆発するちびノッブ。
周囲が騒然とするが、当の本人は黙ったまま動かない。
「先輩! 大丈夫ですか!?」
「……うん…まぁ、大丈夫だよ…」
上半身が若干爆発で汚れた汚れたオオガミは、心配するマシュに答える。
「うん。まぁ、今みたいに爆発するから、皆気をつけて捕まえるように。じゃ、かいさーん」
それだけ言うと、ブハッ。と煙を吐き、倒れた。
全員が心配する中、巌窟王がオオガミを抱えると、
「今回は俺の失態だ…マスターを部屋に届けたらすぐに戻る。すまない」
「よし、ならばそちらは任せたぞ。では、こっちはオオガミの依頼を完遂せねばな。ほれ、心配する前にさっさと行くぞ。マスターの為にも全力を注いで儂もどきを捕まえるのじゃ。散開!」
ノッブの声により、全員は一斉に動き出した。
マシュだけは一瞬躊躇ったが、しかし、最終的には巌窟王に託して行くのだった。
ってことで始まったちょっとばかり続く予感のするノッブ収集編。
構想は少し前からあったけど、色々あってやってなかった感じの今回。頑張って進めていきますよ!