「結局お返しの意味とかあんまり関係ないと思うんだよね」
「……あ~、マスター? それどういうつもりで言ってるつもりで?」
ロビンはそう問いながら、若干青い顔をしているオオガミに聞く。
その問いに対して、オオガミは不思議そうな顔で、
「相手に向けて文句ないくらいの全力でお返しするなら関係ないって意味だけど」
「あぁうんそうだな。その気概なら文句無いわ。で、女神様には何を送ったんで?」
「ありったけのお菓子」
「そんな無邪気な顔で恐ろしいことを……」
ロビンはそう呟き、文字通り山のようなお菓子を渡されたのであろうエウリュアレを思い浮かべ、変な笑みを浮かべる。
「今回新規の妖精国メンバーにも?」
「もちろん。まぁ、一部からはとんでもなく重いものを貰ってるのでお返しに悩んだけども」
「へぇ。何をお返ししたんで?」
「聖杯」
「は?」
呆然とするロビンに、オオガミは苦笑しながら、
「まぁ、実際は聖杯を模した焼き菓子なんだけど」
「それでも大概でしょうよ……」
「ロビンさんも食べる? 試作品の群れがあるよ?」
「……群れ?」
「まぁ、聖杯だからね。魔力も込めちゃったりしているわけです。動くよ」
「なんでそんな余計なことをするんですかねオタクはぁ!」
どこからともなく取り出した聖杯型のお菓子に、全力で警戒するロビン。
そしてクッキーはフワフワと浮かび始める。
「まぁ、浮くくらいしかしないから害はないんだけどね」
「それはそれで超常現象ですけどね? 誰が食べるんだそんなの」
「自称恋人ドラゴンはバリバリ食べてたよ?」
「あ~、聖杯食べてみたいっていってたなそういや。つか、本物の聖杯も持ってるだろうに」
「それはそれ。これはこれだよ。ちなみにメルトにはあんまり受けてなかった」
「それ渡したんですかい?」
「まぁ、これはおまけだけどね。本命は快く受け取って貰ったので」
「はぁ……そっちはそっちで気になるが……まぁいいか。味はどうなんで?」
「美味しくなるように作りましたとも。素材は一級品だよ?」
「あ~、オタクの製菓技術は疑ってはないんだがな。流石にちょっとためらうな……浮いてるし」
そう言って、浮いている聖杯もどきを一つ手に取るロビン。
オオガミも同じように手に取りつつ、
「まぁ、死にはしないよ」
「こんなんで死んだら死にきれないんだがな……」
そう言いながら聖杯もどきをかじるロビン。
その目は大きく開かれ、
「う、うまい……! 本当に試作品か……?」
「そりゃまぁ、残してる試作品は魔力が馴染まなかっただけだからね。味は何の問題もないよ」
「むしろなんで魔力を練り込もうとしたのか……ちょっとオレには難解すぎて無理だな」
「まぁ、それもこれも全部メリュジーヌのせいというか。ドラゴンハートに応えられるのとか無くってね。自分自身も、もう渡す予定があるので使えないしで、思い付いたのがこれってわけ」
「なるほど……それで聖杯もどきをってわけか」
「うん。まぁ、無事大成功だったから良いんだけど、試作品が山のようになってね……後で男性陣に押し付けようかと」
オオガミはそう言いながら立ち上がり、
「とりあえず手近なオベロン辺りにでも渡してくるかな」
「……ホント、仲良いんだか悪いんだかわからんね。妖精王とマスターは」
「本気で嫌われてるわけでもないと思うから。喧嘩友達って感じ?」
「へぇ……まぁ、アンタがそう言うならそうなのかもな……嫌そうな顔をしてるのが目に浮かぶが」
そう言って、二人は笑いあうのだった。
ホワイトデーイベント全然やってない……毎日ログインしてガチャしてるだけだよ頑張らなきゃ……