「ふふっ、ボーダーの中からこんにちは! 強制退去無くて助かった!」
「見ること叶わず帰されるかと思ったわ」
「今いるのは最低限ですけどね……」
ストーム・ボーダーの空間拡張を施されたオオガミの部屋の中で、コヤンスカヤが持ってきた特大のモニターを設置していた。
「というか、これサイズの割に軽いんですよね……」
「空っぽじゃもん……魔術かなんかで動くんじゃろ、知らんけど」
「……害はないと思ってはいますけど、爆発でもしたらどうしますかね……」
「被害に遭うのは儂らだけじゃろ。マスター回りは無駄に防御力高いしな!」
「笑い事じゃ無いんですけどね~……まぁ、よく炎上してましたし、誤差ですか」
「流石に部屋を爆破されたら泣くよ普通に」
じゃあ爆発してもいいか。みたいに話す二人に突っ込みをいれるオオガミ。
膝の上のエウリュアレは楽しそうに微笑みながら、
「まぁ、本当に爆発したら直すのはあなたたちなのだけどね?」
「うげぇ~……儂もう土木作業はいやなんじゃけど~……」
「ちょちょいのちょいで終わる作業なんですけどね。ここに来なくちゃ行けないので面倒なんですよねぇ……」
「まぁ。じゃあもっと気軽に荒らしていいのね!」
「最悪すぎるんじゃが。つか、今までどこにいたんじゃ貴様」
設置が終わり一段落したところに、ふわりと現れるアビゲイル。
すると、オオガミの隣にもアビゲイルが現れ、
「全然反省してないのだけど! あなたは何をしていたのかしら!」
「あら、あっちのアビゲイル? 残念だけどこっちのアビーは反省した上で次は怒られないように慎重にダミーを重ねてくるか、むしろ怒られる方に振り切るかのどっちかなのでもうどうしようもないですね」
「最悪だわ……全くもって最悪だわ……!」
「えへへ……そんなに褒められても何も出来ないわ!」
「誰も褒めてないのだけど!」
悲鳴を上げる向こうのアビゲイルと、照れたように笑うこちらのアビゲイル。
もはやどちらがどちらかわからない見た目だが、こちらのアビゲイルが驚くほどに悪ガキ妹ムーブをしているので見分けがつきやすくなっていた。
「はぁ……アビー。こっちに座って静かにしてて」
「は~い。あなたも座ったら?」
「……本当に自由ね」
そう言いながら、少し離れたところに向こうのアビゲイルが。オオガミの左隣にこちらのアビゲイルが座る。
すると、モニターの電源が突然入る。
『は~い。ここからはカルデア紅白歌合戦後半の部が始まりますよ~!』
半年に一度くらい聞いている声。
もう始まっているのかと思いながら、ここにいるメンバーに軽く目を配り、それぞれが気楽な位置に移動してもらい、しっかり聞こうと意識を向けるのだった。
まだ! まだ今年! 良いお年を!!