「また愉快な姿になってるわね」
「これでも動くのに支障はないんだよね。移動速度が段違いだけど」
そう言って、ベッドの上でぴょんぴょんと跳ねるカボチャ人形の姿になっているオオガミ。
その姿に頬が緩みかけるのを必死で抑えているエウリュアレは、
「そ、それで、肉体の方はどうしたの……?」
「モルガンが持っていったよ。時が来れば戻します。的なことを言って」
「一大事じゃないの。よくそんな落ち着いていられるわね……」
「うん。ここに帰ってくるまでの間にメリュジーヌとメルトとアビーに出会って同じことを伝えたら取り戻してくれるって。肉体が崩壊してなければいいね」
「地獄みたいな争いが発生してるわね……」
「実際警報が鳴ってエルキドゥも出てるみたいだしね。これはこっぴどく怒られるぞ~?」
くねくねと反省を促しそうな踊りをしつつ、楽しそうに言うオオガミ。
エウリュアレはその動きに堪えられなくなったエウリュアレは、ふふっ、と笑いながら、
「他人事みたいに言うけど、自分の事よねそれ」
「もちろん。ただ、新エリちゃんお披露目会でカルデア中練り歩きゲリラライブするつもりだったのだけど、この分では延期になるね……」
「無期限延期で。むしろ中止しなさい」
「いくらエウリュアレの願いでも、エリちゃんライブは止められないよ。と言っても、今回はミュージカルだからそんな被害無いと思うんだけどね。聞いてて被害は無かったし」
「年々耐性を付けてほぼほぼ聞かなくなってる人の被害がなかったは信用できないのよ。わかってる?」
「ふっ、返す言葉もないね。ちなみに特異点では誰もダメージを受けてなかったかな……!」
「観測者が他にいないから信頼がないのが問題ね……」
「永遠通信が切断されてたしね」
カメラでも持っていけばよかったかな。とダヴィンチちゃんへの要望を呟くオオガミ。
それを聞いたエウリュアレは、少し嫌そうな顔で、
「ハロウィンで良い話を聞いた覚えがないのだけど」
「そう? 毎年エリちゃんのライブを聞けて満足だけどね。まぁ、最近は全然聞けてなかったんだけど」
「そうね……珍しいくらいに大人しかったわ。嵐の前の静けさだったわけだけどね」
「ミュージカルを考えてたからね。しょうがないよ。うん。ところでこの王子様っぽい礼装、どうかな。似合ってる?」
そう言って、自分の服がよく見えるように、ポーズを取ったり、ターンをしたりするオオガミ。
エウリュアレは不思議そうに首をかしげながら、
「今の状態でってこと? 最高に似合っているわよ。悪い魔女に人形にされた哀れな王子さまって感じが特に良いわ。抱き上げても?」
「もちろん。人形状態だとカッコいいじゃなくてかわいいに全振りしてると思うんだ。これなら人気ランキングかわいさ部門準優勝も狙えるね」
「そこは優勝じゃないのね」
オオガミを抱き締めるように持ち上げるエウリュアレ。
エウリュアレの問いにオオガミは手をパタパタと動かしながら、
「まぁ、かわいさ部門優勝はエウリュアレだからね。勝てるわけもなく」
「ふふっ、わかってるじゃない。ところで、メルトのリヴァイアサンはどう思ってるの?」
「……強敵過ぎるね。でも同率二位は狙えるよ。たぶん。あっちはキレッキレなダンスは踊れないからね。これは勝った」
「でも向こうは歩くだけで大歓声だから、やっぱり負けるんじゃないかしら」
「勝利を信じてくれないんですか女神様!」
「事実はねじ曲げられないのよオオガミ。だって私もリヴァイアサンに票を入れるもの」
「そ、そんな……!」
ショックのあまり、くてん。と折れ曲がるオオガミ。
そんな動きを見て、意外と柔軟に動くのね。と呟きながら、エウリュアレはオオガミを机の上に置く。
「それで、いつ戻るの?」
「あれ、もう飽きた?」
「いいえ? でも、夜眠るのには寒いから、そろそろ戻ってくれないと困るの」
「体内にカイロを入れてみる?」
「それも良いけど、足りないわ。だからほら、早く戻りなさい」
「……ちょっとモルガンさんのところに行ってくるね」
「ちゃんと取り返してくるのよ」
オオガミはエウリュアレに地面に降ろしてもらい、手を振りながら部屋を出ていくのだった。
反省を促すダンスで相手のMPを削って魔術を解くんだ……!(不思議な踊り
しかしあのダンス、めちゃくちゃ印象に残るダンスなんですよね……
カボチャ頭本人の出番は、うん。って感じですけど。ハサウェイ前編だけじゃ何もわかんないね。