「つまり今年のハロウィンはカムバックスペシャルできっと期間もスペシャルなんだよ」
「ハロウィン31日目ってわけね」
「目前のクリスマスだね」
「おいとち狂った話をするなら出てってくれ」
楽しそうに話すオオガミとエウリュアレに、若干青い顔をしながら文句を言うオベロン。
すると、エウリュアレが至極不思議そうな顔で、
「ねぇ、ここ私の部屋なのだけど、どうして虫がいるのかしら」
「よぉし表出ろ! 奈落での決着を着けてやる!」
「オベロンがエウリュアレに叶うはずないでしょ諦めて。ガンド!」
「不意打ちやめろ!」
既に沸点が振りきれてるらしいオベロンに、自然な流れでガンドを撃つオオガミだったが、そこはオベロン。巨大なダンゴムシを呼び出して盾にすることで逃げ延びる。
ちなみに、当然ながらここはオオガミの部屋で、オベロンの部屋ではない。
「まったく。ハロウィンは良いものだよ? エリちゃん増えるし。最古参の一角だからね? もっと敬って?」
「全英霊に宣戦布告してるのに敬うわけないじゃない。むしろハロウィンを乗っ取りに来るわよ」
「そんなオベロンにはエリちゃんライブの特等席を用意してあげよう」
「おい待て何も言葉を発してないのに地獄への道を秒で舗装するんじゃない! というか、なんで誰も止めないんだよ!」
「諦めの姿勢は大事だよオベロン。純粋な好意は時として残虐なんだ……」
オオガミの、もう何度も地獄を見てきたと言わんがばかりの儚げな表情に、思わずオベロンは後ずさりをしながら、
「くっ、それに反論できる術をオレは持たない……! これが汎人類史か……おぞましいにもほどがあるだろう……!」
「あれは汎人類史というよりもエリザ粒子史だね。ところでハロウィンの回想に鬼ランドがないのはなんで? ペンライト振っておにきゅあ~! って叫ぶ世界線は?」
「剪定されたわ。黒ひげの首ごと」
「あ~……黒ひげの首と一緒なら仕方ない。夏は活躍してたね船長」
「したっぱとしてね」
「コイツら話が右へ左へとぶっ飛んでいくんだが……実はこっちの声、聞こえているようで聞こえてないんじゃないか?」
「ふふっ、振り回されるの好きだろう? オベロンは」
「振り回されるを越えて四肢を引き裂かれる気分だよ。情報量が多すぎる……!」
あまりにも過剰な情報量。しかも、嘘がほとんどないことが、なおさらオベロンの困惑を加速させていた。
「でもさ、オベロンも一回くらいはエリちゃんの歌を聞いても良いと思うんだよ。意外と気に入るかもしれないよ?」
「気分が悪くなったら奈落に落とすけど良いの?」
「まぁ、その気力が残ってたら相手をするよ」
「聞いても無傷なのって、基本いないものね」
「厄介なことこの上ないな……」
オベロンがそう悪態を吐くと、オオガミとエウリュアレはにっこりと笑いながら、
「まぁ、オベロンが参加するつもりがあるにしろないにしろ」
「答えを無視してつれていくから安心しなさい?」
「は? ちょ、本気かよふざけんなオレは帰るぞ……!?」
オオガミとエウリュアレに腕を掴まれたオベロンは、ひきつった顔をしながらエリザベートの所へと引きずられていくのだった。
ハロウィンが帰ってきた……! さぁ、宴だぁー!