「お、やっと起きたか」
「……朝から不機嫌だね、オベロン」
寝ているオオガミの顔を不機嫌そうに見ていたオベロン。
オオガミはそれに苦笑いをしつつ、
「……エウリュアレは?」
「さぁね。オレが来たときにはお前一人だったよ」
「なるほど……今年は何もイベントがない誕生日だから何が来るのか戦々恐々としているわけだけど……」
「そ。オレには関係ないから良いけど、部屋を出るなら注意しなよ? 今日のルールは部屋を出たら、らしいから」
「ごめん待って。今日のルールってなに? 知らないワードなんだけど」
さらっと出てきた不穏なワードに思わず聞き返すオオガミ。
すると、オベロンは生き生きとした顔で、
「え、ルール知らないの? 守らなくちゃいけないお約束ってやつだぜ? 誰しもそれに縛られてるだろ?」
「そういう意味じゃないよ焼くぞ」
「毎日部屋が燃えてるからっておまけ感覚で焼かないでくれる?羽根が燃えちゃうじゃん」
「次見たときには治るから問題ないでしょ」
「妖精王として譲れないところな訳だが。そういうのわからないかなぁ」
「そういうのは羽根が煌びやかなときにして。今のドス黒い状態で言われてもなにも響かないからね?」
「ちっ、細かいな……つか、さっさと部屋出ろよ。そうすれば面白くなるのにさ」
「絶対ろくな目に遭わないじゃん……なんで誕生日にそんなことになるわけ……?」
「いいじゃんか。祝福だぜ? 素直に受けておけよマスター。そういうの好きだろ?」
オベロンはそう言って、オオガミをベッドから引きずり出す。
引きずり出されたオオガミは、特に抵抗することはなく、そのまま身支度を始める。
「ま、外に出なきゃエウリュアレにお祝いされないし、出なきゃいけないのは確かなんだけどね。オベロンは?」
「いかなーい。オレはここで寝てるわ。帰ってきたら起こして」
「はいはい。じゃ、行ってきますよ~」
そう言って、部屋を出るオオガミ。
直後、空気が爆ぜた音を聞いたオベロンは、ベッドに寝転がって耳を塞ぐのだった。
* * *
「想像の半分くらいの被害ね」
「血を吐いてることは想定内ってことですか女神様」
メリュジーヌの突撃を受けたためか、膝を震わせ、口から血を流しているという、既に瀕死の様相のオオガミ。
ちなみに、突撃した本人はといえば、バーゲストに捕まり連れ去られていった。
「それで、なにか食べられるくらいには元気?」
「うん。これくらいなら何の問題もないよ」
怪我を感じさせないオオガミの表情に、エウリュアレは呆れたようにため息をつきながら、
「その怪我を『これくらい』で済ませるのはどうかと思うけど、まぁいいわ。カーマ、お願い」
「は~い……って、うっわ。なんですかその大怪我。マスターとしてどうなんですか」
「リヴァイアサンたちに支えさせてあげるわ。さっさと座りなさい」
驚くカーマに、すぐさまリヴァイアサンを送り、支えさせるラムダ。
オオガミは助けを借りながら席に座り、その前にケーキが置かれる。
「それにしても、朝からケーキとか凄いよね」
「だってあなた、早くしないと食べられなくなってるじゃない。まだ料理は来るし、食べ歩きにも行くじゃない。なら朝からケーキでも良いでしょう?」
「……まぁ、そういう日があっても良いよね」
そう言うオオガミの右側にエウリュアレは座り、左側にはラムダが。そして、カーマが正面に座ると、
「ハッピーバースデー、オオガミ。今年もありがとう。来年もよろしくね?」
「……ありがとう、エウリュアレ」
そう言ってエウリュアレの頭を撫でるオオガミ。
それを見たカーマとラムダからブーイングが起こるも、オオガミは楽しそうに笑いながらケーキを食べ始めるのだった。
珍しくイベントのない誕生日。ハロウィンが復活するという予報はありましたけど。今年のエリちゃんはJAPANエリちゃんだよ……!