「やぁマスター! お宝探しなのに僕を呼ばないのはどういう了見かな? どう考えても最適だろうに!」
「何に買収されてきたんだオベロン」
キラキラな王様スタイルでやってきたオベロンに、心底嫌そうな顔をするオオガミ。
だが、彼は気にした素振りもなく、
「レイシフト適性とやらも適当なことをするよね! 僕がいればブランカによる高い機動力、どこにでも入れる便利なサイズに変わって偵察が出来るのに! どうして誘ってくれなかったのかな!」
「誘ったら二つ返事でイヤって言ったんでしょうが」
「そうだっけ? 僕ちょっと覚えてないな。気のせいじゃない?」
「それにもうそろそろ帰るところだし、役立つところなんて……あったわ」
「お、なんだい? 聞かせてくれたまえよマスター」
興味津々といった様子でオオガミに近付くオベロン。
その眼前に、オオガミ宝箱を持っていき、
「オベロン魔術でこの箱を開けたいんだけどご教授願える?」
「ぶっ殺すぞクソマスター」
一瞬で最終再臨に変貌したオベロンからの氷点下の眼差しを受けるオオガミ。
だが、その視線をなんでもないかのように受け流しながら、
「今のところキャストリアと箱開け勝負をして500戦500連敗という戦績。これは鍵開け熟練度が低いんだなと思って練習を繰り返してたけど、やはりここは本家大本のオベロンから教わるのが一番かなって」
「他にも鍵開けが得意そうなのがいるだろうが。どうしてオレなんだ」
「そりゃ、みんな魔術で開けるか筋肉で開けるからかな」
「なんだ? キャスターとバーサーカーしかいないのかここは」
「そんなイカれた集団いる?」
「お前たちのことだっての」
はぁ。と大きくため息を吐くオベロン。
だが、オオガミはニコニコと笑みを浮かべながら、
「とりあえず、鍵開け教えて?」
「オベロン魔術のオブラートすら捨てやがったなクソマスター。今度チャンバラ勝負だ。ボッコボコにしてやる」
「お爺ちゃんに竹光作ってもらえて上機嫌だったわけか」
オオガミがそう言うと、若干ムッとした顔をしつつ宝箱を奪うように持っていくオベロン。
そして、どこからともなくヘアピンを取り出すと、
「一度しかやらん。見て覚えろ」
「動画撮ってもいい?」
「撮ったら魔術って言い張れないだろうが」
「難しいんだね、オベロン魔術って」
「オレが覚えるのにどれだけ時間をかけたか……そしてアイツがどれだけの早さで飲み込んだと思ってんだ……泣けるぞ。才能の差に」
「あぁ……うん、なんかごめん」
「うるさい謝るな虫酸が走る!」
そう悪態を吐きながらも、オベロンは懇切丁寧にオベロン魔術の解説をしてくれるのだった。
オベロン魔術は頑張れば習得できると思うんだオオガミ君……!