「マスター自ら厨房に立つんだ」
「趣味の範疇だけどね」
つまらなそうに言うオベロンに、オオガミは楽しそうに笑って答える。
殊更につまらなそうな顔をするオベロンは、
「て言うかさ、なんであのクラス相性ガン無視女神は君の部屋に入り浸ってるわけ? 追い出さないの?」
「なんで? 追い出す理由無いよ?」
「……魅了でも食らってるのか?」
「まさか。もし食らってたとしても、それはそれで構わないけど」
「悠長だなぁ……乗っ取られるかもしれないぜ?」
「まぁ、エウリュアレが3割くらい負担してるから、実質乗っ取られてるのかもしれない」
「お前よくそれでマスター面出来るな」
「最近は妖精騎士と争ってるから仕事が帰ってきたんだけどね。オベロンも争いに混ざる?」
「ハッ、誰が好き好んで面倒なものに首を突っ込むのさ。平穏が一番。一生休憩してるよ俺は」
そう言って、机に突っ伏すオベロン。
そんな彼に、オオガミは一口サイズに切り揃えたメロンを出しつつ、
「しばらくは無理強いしないよ。スキルが育つまではね」
「運用宣言やめてくれない? 夜に虫放つよ?」
「エウリュアレに磔にされるよ?」
「なんでそこで怒るのが女神の方なんだよ……おかしくないか? 寝るときまで一緒とか聞いてないんだけど」
「基本いつも一緒だからなんとも言えないね。今日みたいに一緒にいない方が異常扱いされるから」
「えぇ……どうなってんの……」
「ま、うちの女神様はかわいいからね。そんなときもあるよ」
「説明が一気に雑になったな」
メロンを食べて満足そうな顔をするオオガミに、呆れたような目をするオベロン。
そして、同じようにメロンをつまみつつ、
「俺の記憶だとさ、モルガンに夫扱いされてなかったか?」
「それはそれ。俺の最優先事項はエウリュアレなわけで、その地位は未だ揺らぐことがないわけだ」
「ふぅん……面倒なことになってるんだな」
「そう? こっちは割と楽しんでるんだけど」
「どう考えても面倒くさい。人間関係全部考えてたら吐きそうだ」
「まぁ、複雑な関係ではある。神様多いからね、カルデア」
「主従関係でお前が優位に立ってるの珍しいだろ絶対」
「体感半分以上はこっちが負けてる気がする」
「濃すぎるんだよ、全体的に。ってことで俺は部屋でのんびりしてていいよな」
「そもそも連れ出してすらいないんだけど。勝手に出てきたのはそっちじゃんか」
「あ~、そうだったっけか。まぁいい。とにかく、お前の部屋には近寄らないからな。巻き込まれて焼かれるのはカンベンだ」
「わかる。俺も部屋が焼かれるのは苦しいからしばらくオベロンの部屋に泊まるかな」
「お前何を聞いてたわけ?」
空になった器を片付けながら言うオオガミに、オベロンはあり得ないものを見るかのような目を向ける。
だが、オオガミは気に留めた様子もなくオベロンの前に戻ってくると、
「じゃあ、そういうことで。一週間くらいよろしくね」
「そういうところが嫌いだよ!」
苦虫を噛み潰したような顔で、オベロンは言うのだった。
オベロン……スキル育成が終わらない私の罪を許しておくれ……レベル100二人とスキルマでもうQPが尽きてしまったんだ……許したまえ、許したまえ、我の罪を許したまえ……