コラボが苦手な方は読み飛ばしてください! 全然大丈夫という方はこのままどうぞ!
日付も変わった頃。
出店は残らず撤収していて、花火があった痕跡の残る星空の下、オオガミとエウリュアレ。さらに、並行世界のマスターであるアオイと浅上、メルトの5人が集まって花火をしていた。
「あの、これは何でしょう?」
そう言ってネズミ花火を手に取り不思議そうに聞く浅上に、オオガミは
「ふっふふふ……その花火はこの中で一番危険なわけですよ」
「ゴクリ……」
そう言って、悪い顔をしながらネズミ花火を受け取るオオガミ。
それに対し、アオイは目を輝かせながら息をのむ。
だが、エウリュアレと浅上は少し嫌そうな顔で、
「ちょっと、安全なのはなかったわけ?」
「マスター君が怪我をするようなのはダメですからね」
「基本大丈夫……うん。大丈夫。それに、これはこれで見てて楽しいからね」
そう言ってオオガミは少し離れた位置でネズミ花火に火をつけ、その場に投げる。
直後、シュワワアアァァ!! と火花をまき散らしながら回転し始める。
その勢いにエウリュアレは近くにいたメルトの後ろに隠れ、
「悪くはないわね。あからさまに危険そうなことを除けば!」
「今日は珍しく臆病気味だね? それにほら、もう落ち着くよ」
オオガミがそう言うと、ネズミ花火の勢いが収まり、煙を立てて静かになる。
それを見てエウリュアレがメルトの後ろから出てきたと同時、パンッ!! と炸裂音を立てて爆ぜるネズミ花火。
それにオオガミ以外はビクッ! として目を丸くしてるので、オオガミはクックと笑いながら、
「まぁ、悪くはないと思うんだ?」
「えぇ、最高ね? あなたに火を付けたらもっときれいに回るかしら」
「う~んこれは怒ってる。どうして?」
「オオガミ君はもう少し自分のことを顧みたほうがいいと思うよ?」
何故かご立腹なエウリュアレに、首をかしげるオオガミと、苦笑いでアドバイスをするアオイ。
言われたオオガミは少し考え、
「とりあえずネズミ花火消化しなきゃ」
「あ、私もやりたい!」
「ほんっとうに私の話を聞いてないわね?」
何も聞いていなかったとばかりにネズミ花火に火をつけ始めるオオガミとアオイ。
エウリュアレはそれを見て、同じようにネズミ花火をいくつか持つと、
「オオガミ? 追いかけられるのはお好きかしら」
「……花火に追われるのは嫌かなぁ!」
満面の笑みでオオガミに火のついたネズミ花火を投げ始めるエウリュアレ。
当然、オオガミとアオイが投げていたものもあるので、四方八方にネズミ花火が散らばっている中を逃げ惑うオオガミ。
アオイはといえば、同じようにネズミ花火に囲まれて、浅上やメルトに視線を向けても、同じようにネズミ花火に阻まれている姿が見えるだけで、逃げ場などないのだった。
* * *
「ふぅ……ひどい目に遭った……」
「ネズミ花火がいっぱいあるのはかなりきれいだったけど、不規則に動くからこっちも下手に動けないの、やられたよね……破裂音も結構強かったし。なんでオオガミ君はあんな軽快に動けるの?」
「長年の逃げ感」
「普通に生活してる上では一生聞かなそうな言葉だね」
「ねぇ、オオガミ? 説教されてるのわかってる?」
何事もなかったかのようにアオイと話していたオオガミだが、現在正座をさせられてエウリュアレと浅上の説教を受けているところだった。
「なに、これくらいで怪我をするような体じゃないので!」
「怪我を怪我と認識しないことを怪我をしない体とは言わないから。わかってるの?」
「まぁ、怪我そのものよりも、怪我をした後の医療班のほうが何倍も怖いよね」
「怖がるところを間違えてるんだけど」
「あなたのところのマスター、大丈夫? 恐怖とか感じてなさそうなのだけど」
「反省しないからもう諦めてるわよ……言うだけ言うけど。マシュに言われてもそんなに改めないんだもの。困っちゃうわ」
はぁ。とため息を吐いて、オオガミを立たせるエウリュアレ。
「怪我はないわね」
「もちろん。ちゃんと下手に動かなければ危ない位置に投げたからね。誰も怪我はないはずだよ」
「あなたのを聞いてるのだけど」
「まぁ、逃げることだけが取り柄だからね。無傷だよ」
「そう、それならいいけど。ほら、次の花火行きましょ」
「うん。といっても、最後なわけだけど」
そう言ってオオガミが取り出したのは線香花火。
彼は全員にそれを配りつつ、
「ま、これを持ったらやることは一つでしょ」
「誰が最初に落とすかって事ね」
「そういうこと」
「風情とか、そういうのは考えないわよね。えぇ、想定はしてたけど」
「線香花火バトルも風情だと思うんだよ。個人的には最高に楽しいし、一番集中して見ていられるよね」
「気持ちは分かる」
「集中力が足らないだけではなくて?」
「あまりにも正論。心が痛いよエウリュアレ」
「甘んじて受けなさい。後早く火。私は普通に花火したいんだから」
「あ、ごめんなさい」
エウリュアレの問答無用の圧に、おとなしく従うオオガミ。
それを見ていたメルトが、
「ビックリするくらい従順ね。弱みでも握っているの?」
「私自体が弱みなんだもの。大抵の無茶は通るわ。こっちのメルトも、同じようなものだけど」
「……そう。そんな関係もあるのね」
「なんだかエウリュアレ様、凄い頼りがいある感じするね?」
「あら、それならいいのだけど。でもオオガミのことを制御できないのは悔やまれるわね」
「自分のマスターを制御するっていうのも、不思議な話ね」
「えぇ。でも、おかげで退屈はしないわ」
そう言って笑うエウリュアレ。
アオイたちはそれを見てつられて笑顔になったところに、オオガミが戻ってくる。
「あれ、どうかしたの?」
「いいえ? なんでもないわ。さ、線香花火をしましょう」
そう言って、エウリュアレは線香花火に火をつける。
* * *
パチパチ、パチパチ……とか弱くキレイな火花を散らしていた火の玉が、ポトリ、と地に落ちる。
「私の勝ち!」
「くっそぉ……! 後二秒持てば勝てた……!!」
「最速で落としたくせによく言うわ」
「付けた瞬間くらいに落ちましたよね」
「弱いとかそういうレベルじゃなかったものね」
「ボッコボコに言うじゃん……!!」
最速で落としたオオガミに全員は呆れた視線を向ける。
だが、オオガミはすぐに気を取り直すと、
「勝者には報酬があるんですよ」
「何それ。初耳なのだけど」
「エウリュアレ様も知らないの?」
「全く。いつの間に用意したのかしらね?」
そう言っていると、オオガミはどこからか小瓶を取り出す。
中にはいろんな色の球体が入っているのだけは見える。
「それは?」
「飴がぎっしり入ってる小瓶。大体30個ほどかな。一日一個計算で一か月分。一日一瓶のレアものだからね。これが商品です」
「毎度貴重なお菓子をくれる気がするんだけど……どうしてそんなレアものばかりなの?」
不思議そうに聞いてくるアオイに対し、オオガミは少し考えると、
「まぁ、自家製だからとしか言いようがないかな。今のところ、3割くらいしかまともに完成しないから、失敗作は袋詰め訳あり品として別にあるよ」
「な、なるほど……今日はその貴重な飴がもらえたって事……?」
「この前作り始めたばかりだから貴重なだけで、二か月後にはもっと出てるわよ」
「あ、そういうことね」
エウリュアレの言葉を聞いて、ようやく納得して受け取るアオイ。
それを確認すると、オオガミは花火に使っていた火を消し、
「今日はいい記念になったよ」
「こっちこそ。最高の誕生日になったよ!」
「それならよかった。それじゃあ……最後にこれを」
キィン! ときれいな音を立てて飛んでくるものをとっさに掴むアオイ。
それはコインのようだが、何かまではしっかりわからなかった。
「これは?」
「ん~、まぁ、平たく言うと縁かな。楔でもいいけど。それ自体は何の変哲もないラスベガスで手に入れたコインだけど、わかる人には優秀なパスになるはずだから」
オオガミの説明に、首をかしげるアオイ。
エウリュアレはその間にオオガミの隣に移動すると、
「今日はお疲れ様。三人とも楽しんでくれたなら幸いよ」
「もうそろそろお別れの時間みたいだからね」
オオガミがそう言うと、アオイたちがキラキラと光り始める。
それは見覚えのあるもので、レイシフトの前兆だった。
「こっちこそありがとう!! いい思い出がたくさん出来たよ!!」
「次に会う時までにアビーさんに教育、お願いしますね」
「花火、割と楽しかったわ。次も楽しみにしてるわね」
手を振るアオイに、同じように手を振り返すオオガミ。
エウリュアレも手を振りながら、
「私も楽しかったわ。次もあったら楽しみましょうね」
「いつでもお呼ばれされるからね」
「うん。それじゃ、またいつか!」
そう言って、三人は消える。
オオガミはそれを見送ると、
「よし。まずは資金集めだね。今回のお祭りと妖精騎士集団で資金の底が尽きたからね」
「そうね。その前にノッブとBBと合流して掃除よ。ペンギンに埋もれてるっていうメリュジーヌも回収しなきゃなんだから」
そんなことを話しながら、二人は後片付けに向かうのだった。
花火感出てるかな……出てるかな……?