今日のカルデア   作:大神 龍

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 本日二本目!


無事合流かな(さぁ、遊びに行きましょ)

 12時から始まり、現在13時。

 開場からまだ一時間ほどだが、既に休憩所のコテージは大盛況だった。

 その様子を、部屋の真ん中付近にある椅子に座りながら眺めていたオオガミは、

 

「はぁ……想像の倍は混んでるね……これみんな夜まで持つのかな……早めに設定しすぎたか……」

 

 そう言って、失敗したかもしれないと悩むオオガミに、

 

「別に、一回帰ってもいいんじゃないの?」

 

 と、背後から声がかかる。

 振り向くと、そこには浴衣を着たエウリュアレが立っていた。

 藍白色にアサガオの柄のきれいな浴衣で、手には同じ絵柄の扇子を持ち、座っているオオガミに、若干不満そうな顔をしていた。

 

「……とても似合ってるいい浴衣だね」

「ありがと。でも、こんなに暑いとは思わなかったわ。もっと遅めでもよかったかもね」

「そんな気はするね。意外と難しいね、時間判断」

「まぁ、ここに来るまでにバラキーとすれ違ったけど、あれは楽しんでそうだったわ」

「そっか……じゃあ、こっちも色々見ていこうか。それなりに広いから、全部回れるかは運次第だけど」

「売り切れてたらちょっとイヤね」

 

 そう言いながら、オオガミはエウリュアレの手を取って、コテージを出る。

 

「まずは……どこに行こうか」

「暑いから冷たいものがいいわ。なにかないかしら」

「じゃあ、まずはあそこかな」

 

 オオガミはそう言うと、人混みの中をどんどん進んでいく。

 エウリュアレもはぐれないようにオオガミに出来るだけくっついて、強く手を握る。

 

「んもう、まだこんなに日が高いのに、なんだってこんな混むのよ」

「まぁ、異国の行事はなんだって気になるものだし。早めに行って楽しもうって人は多いんじゃないかな?」

「これ、夜の方が空いてたかもしれないわね」

「それはないでしょ。夜は花火があるから、そっちの方が混むよ」

「むぅ……あんまり好きじゃないわ。こういう混雑」

「アステリオスならそんな感じなかったのかもだけどね……彼ほど頑丈じゃないからなぁ」

「いいのよ、別に。あなたにそれは求めてないもの。それより、はぐれないでよ。私じゃ見つけられないわ」

「うん。そろそろ目的地だからもう少しだけ我慢してね」

「えぇ、大丈夫よ」

 

 そう言って、オオガミの腕をしっかりと掴むエウリュアレ。

 オオガミは強く手を握り返しながら目的地に向かい、

 

「ん、マスターか。その様子だと、無事合流できたみたいだな」

「あ、ジーク……あれ? ここ、アナスタシアの店じゃなかった?」

「その通りなんだが、前を通りかかったときに店番を任されてしまったんだ。俺もやってみたかったのもあったから引き受けたのだが、一気に混み始めて少し驚いている。氷はまだあるが、いつなくなるかわからないな……」

「あ~……うん。お疲れ様。交代は出来ないけど、アナスタシアを見かけたら声をかけておくよ」

「あぁ、よろしく頼む。ところで、何を食べる? ドライフルーツのかき氷は売り切れているから、他ので頼む」

「流れるように商売に入ったね」

 

 オオガミはそう言って、メニューに目を向ける。

 小中大のかき氷に、イチゴ、メロン、レモン、ブルーハワイのシロップがあって練乳がかけ放題となっていて、どれにしようか考えながら、隣のエウリュアレに目を向ける。

 

「エウリュアレは何がいい?」

「……ブルーハワイって何味よ」

「それは永遠の謎。というか、アナスタシアも適当に導入したんじゃないの?」

「俺も食べてみたが、分からなかった。ただ美味しいのは確かだから安心してくれ」

「ふぅん……じゃあ小さいサイズでイチゴ」

「俺は普通サイズのメロンで」

「わかった。少し待っていてくれ」

 

 そう言って、氷を取り出し削り始めるジーク。

 オオガミたちはそれを見ながら、

 

「それにしても、ドライフルーツはどうやって作ってたんだろ……」

「元々、食糧の保存期間を伸ばそうと言う話でそういう案があったらしく、彼女が作ってみたいと言うので決行されたらしい。今のところ急速な冷凍は彼女の専売特許だから、自由に使っていいらしい」

「へぇ……ジークは色々知ってるね」

「倉庫番だからな。そういう話はよく入ってくるんだ」

「なるほど……」

 

 厨房組じゃないんだね。と言って納得していると、ジークが完成したかき氷を差し出し、

 

「小さいのと普通ので、合計500QPだ」

「オッケー。はい、500QP」

 

 オオガミはそう言って、かき氷を受け取ってからQPを手渡す。

 受け取ったジークは、ちゃんとあることを確認して、

 

「あぁ、ピッタリだ。練乳はそこにあるから、好きなだけかけていってくれ。ただ、一本丸々使うのはちょっと困る。ストックはあるけど」

「え……一本丸々使うなんてことある?」

「あぁ……茨木童子が使っていた。あれは驚いたな……アナスタシアがすごい顔をしていた……」

「何それちょっと見たかったな……」

 

 そんなことを話していると、隣から、

 

「村正! あれ食べよう!」

「かき氷ぃ? お前さん、よく食うなぁ……いや、いいけどよ? (オレ)よかお前さんの方がQP持ってるだろ」

「それはそれだよ村正! 枯渇させるからな村正ぁ!」

「なんだなんだ、(オレ)の財布に恨みでもあんのか?」

 

 そう言いながら、キャストリアと村正がやってきた。

 そして、オオガミたちと目が合うと、

 

「あ、オオガミ!」

「キャストリアに村正。楽しんでる?」

「うん! 結構楽しんでるよ!」

「こういうのも乙なもんだ。珍しいもんもあるし、たまにはこういうのもいいな」

「それならよかった。こっちも準備した甲斐があったよ」

「あぁ。ただ、次は店をやってみてぇな。色々と作りたくなっちまった」

「村正はいつもそんな感じだよね。私はお客さんでいいかな」

 

 そう言って苦笑するキャストリアに、村正は、

 

「まぁいいじゃねぇか。とりあえずかき氷食うぞ。味選べ」

「わっ、分かったから頭撫でるな!」

「ハハハ、じゃあこっちはもう行くね」

「バイバイオオガミ! またあとで!」

 

 そう言って、オオガミはエウリュアレを連れて移動するのだった。


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