「いつの間にか仲が良くなってるよね」
「「全然仲良くない」」
そう言って、互いを睨んでいるのは、ラムダとメリュジーヌ。
その二人に挟まれているオオガミは、若干遠い目をしながら、
「そもそも、二人はなんで争ってるわけ?」
「簡単なことよ。この小さいのが、私の方が速くて強いとか言い出すんだもの。痛い目を見せてあげるわ」
「事実なのだから仕方ない。私は最強。覆らない事実だからね」
「ふんっ、なんとでも言いなさい。でも、私は既にあなたに勝ってるから」
「あれはまぐれだから。今なら負けないし」
「良いわ、受けて立つわよ。でもまた私が勝つから」
「うんうん。仲が良いのはわかったから力は抜いてくれないかな。折れちゃうよ」
オオガミに言われ、咄嗟にオオガミから少し離れるメリュジーヌ。
「ご、ごめんマスター。思わず力が入ってしまった……」
「折れてないから大丈夫」
謝るメリュジーヌだが、軽く許すオオガミ。
だが、それを聞いていたラムダは、離れるどころか顔を寄せ、
「一ミリも苦しそうな顔しないじゃない。痩せ我慢も大概にして。素直な表情をしなさい? でないとつまらないじゃない」
「はいはい。でもそもそもメルトは寄り掛かるだけだからそんな痛くないよ。挟まれてるとつぶれそうになるけど」
「力を入れているつもりはないから、全くわからないわ。顔に出しなさい顔に。でないと本当にいつか潰すわ」
「努力するよ。っと、いや、それを話したいんじゃないんだよ」
オオガミがそう言うと、ラムダは少し離れ、メリュジーヌは元の位置に戻る。
「明後日に夏祭りをやろうと思ってるんだけど、二人には警備を頼みたいんだよね」
「……私たちは監視で、遊んでるのを見てろってこと?」
「いや、何かあったら見に行く程度でいいんだけど。メリュジーヌもメルトも、向いてると思うんだよね」
「うん、警備か。もちろん受けるよ。私は妖精国でも同じようなことをしていたからね」
「私は空なんて飛べないけど。人混みをすり抜けるのはあまり得意じゃないわ」
「あぁ、メルトには、リヴァイアサンを放ってもらおうと思って」
「……監視の目を広くするって話ね」
「そう言うこと」
オオガミの提案に、ラムダはリヴァイアサンを呼び出して抱き上げ、
「別に、出来ないわけではないけど、この子たち単体はそんなに役に立たないわよ? 三匹で連携して、ようやくあの無駄にでかいニワトリ一匹に辛勝ってところだもの」
「数は何匹まで?」
「30くらいかしら。ラスベガスの時はもう少し行けたけど、今は無理ね」
「ん~……まぁ、それだけいれば抑止力にはなるよ。かわいいは正義だし、リヴァイアサンを見ればみんな笑顔になるでしょ」
そんなことを話していると、メリュジーヌが、
「ね、ねぇ……その、リヴァイアサンという生き物、少し触らせてもらえないかな……?」
と、恐る恐ると言った様子で聞いてきた。
オオガミはすぐにラムダを見ると、彼女はとてもいい笑みを浮かべ、
「イヤ」
「えっ……そ、そんな! どうして!?」
「あら、いい表情をするわね。でもイヤなものはイヤよ。リヴァイアサンは私のようなもの。海と空は相容れないの。交わらないから」
「でも昔ペンギンは空を飛んだって説があるよね」
「私のリヴァイアサンは飛ばないわ。跳びはするけど」
「ぐっ、くぅ……これがカルデアのやり口なんだね……!」
「変な誤解をされてるんだけど」
「海は私の支配下だし、彷徨海も海上だから私の支配下みたいなものね。空の最強さんにはお帰りいただこうかしら」
「なんて恐ろしいんだ……! でも私も伊達に最強を名乗ってるわけじゃない。マスターもそのかわいい生き物も必ず手に入れてみせるから!」
「じゃあ私のリヴァイアサンより役に立つことね。あぁ、でも、数を多く展開すると、全てを見れるわけじゃないからその子達がどうなっているかわからなくなってしまうかもしれないわね」
「そ、そうなの……? あっ、任せて! ちゃんと空から会場を見守ると約束しよう!」
そう言ってやる気を出すメリュジーヌに、ラムダは笑みを浮かべつつ、
「これで、時間は作れそうね」
「一緒に回る?」
「いいえ? 残念だけど、今回はリップの先約があるの。会場で会うことがあれば挨拶ぐらいはしてあげるけど、それ以外はキャンセルよ」
「……ケンカはダメだよ?」
「ケンカなんてしてないわ。相手をしないと拗ねられるくらいよ」
「水天宮の時もそんな感じだったよね。まぁ、仲がいいならそれでいいや」
そんな話をしながら、三人はシミュレーションルームに向かうのだった。
海の最強と空の最強は争い会う関係なんだよ! という偏見を特大に盛り込みつつ、リヴァイアサンを前には空の最強も崩れ落ちるのよ……かわいいからね。リヴァイアサン。