「……いややっぱおかしいだろ」
「? どうしたの?」
シミュレーションルームに向かいながら悪態を吐くバーヴァン・シー。
その前を歩いていたジャックは、振り返りながら首をかしげる。
その無邪気な様子にバーヴァン・シーはより嫌そうな顔をするが、それを気にせずジャックは隣りまで戻ってくる。
「なんで私が面倒見なきゃ行けないわけ?」
「うん? わたしたちはあなたをお部屋から連れ出してって頼まれたんだよ?」
「あん? 誰がそんなの頼んだんだよ」
「おかあさん!」
ジャックの返答に、バーヴァン・シーは首をかしげて考え、
「それは……親子揃ってサーヴァントってわけ?」
「ううん。おかあさんはサーヴァントじゃないよ。あなたもおかあさんに呼ばれてきたんでしょ?」
「……マスターのことか」
「うん。
「……自分のことをおかあさんって呼ばせてるのキモすぎだろ」
ジャックのマスターの呼び方に若干寒気を感じたバーヴァン・シー。
だが、ジャックは不思議そうな顔をしながら、
「でもおかあさんとモルガンが結婚したらあなたにとってもおかあさんはおかあさんになるでしょ?」
「いやそれを言うならお父様……待て。私は認めないからな? あとお母様を呼び捨てにするんじゃねぇ!」
「じゃあモルガンはなんて呼べば良いの?」
「そりゃ、様付けだ。決まってんだろ」
「でもおかあさんは様付けしないよ?」
「マスターよりお母様の方が偉いからな」
「ふぅん。変なの~」
ジャックはそう言って笑いながら小走りで前に出る。
バーヴァン・シーは呆れた顔でその後ろをついていきながら、
「そういや、あいつを親みたいに呼んでるやつって他にもいるのか?」
「ん~? おかあさんをおかあさんって呼んでるのはいないけど、おかあさんのおねえちゃんといもうととおかあさんのおかあさんはいるよ?」
「……全員狂人だろ」
「おかあさんのおかあさんはバーサーカーだけど、おかあさんのおねえちゃんは聖女サマだよ?」
「……良くないものにでも取り憑かれてるの?」
「しらな~い!」
そう言いながら、たどり着いたシミュレーションルームの扉を開き、入っていくジャック。
バーヴァン・シーも遅れて入ると、
「へぇ? 悪くはないじゃない」
「でしょ? おかあさんが心配するからあんまり来れないけど、ちょっとだけ好きなんだ」
そこは新宿。その再現ではあれど、夜と感じさせない強い光に、彼女たちは笑みを浮かべる。
「ここはグロスター並みに発展してるんだろうし、ちょっと見て回るか。一緒に行くんだろ?」
「うん。ここに連れてきたのは、あなたならそう言ってくれると思ったからだもん」
「お上品でいさせたいってか。ま、私までそれに従うつもりはないけど、でも、これは二人の秘密な。そっちの方が盛り上がるでしょ?」
「うん! 余計なことを言うお口は縫い合わせちゃうよ! それでもダメなら解体だー!」
「アッハハ! いいわねそれ! えぇ、余計なことを言ったら解体ね! バラしてあげるわ!」
そう言いながら、二人は夜の新宿を探索しに行くのだった。
モルガンには娘がいますけど、オオガミくんにも娘はいるんですよ……! と、書き殴ってからこれどちらも残虐娘では。と気付く今日この頃。
最低最悪で最高の羽虫ことオベロンくんはいつ来てくれるのですか。お迎えしたら連れ回してやるからな絶対。