「モルガンさん。どうか部屋は燃やさないでください」
「善処します。もっとも、そこの女神がいなければそんなことにはならないのですが」
「いい加減しつこいわね……あそこは私の部屋なの。勝手に入って勝手に怒るのは話が違うでしょう」
「うん。エウリュアレの部屋でもあるけど、俺の部屋でもあるのを覚えててくれると嬉しいなって」
炎上し続ける部屋を飛び出し、静かに泣きながら食堂に向かうオオガミと、彼を挟むようにして喧嘩をするエウリュアレとモルガン。
もしかしたら喧嘩するほど仲が良いというパターンなのではと期待を持ってはいるが、毎朝部屋が炎上している現状、その可能性は限りなく低いのではと考えていた。
「はぁ……お菓子で懐柔出来ないからなぁ……バラキーもカーマも、そこでおとなしくなってくれたわけだけど、効かないよねぇ……」
「聞き捨てなりませんね。お菓子とはなんですか。その口ぶりからして特別製のようですが」
「い、いや、そんな大層なものじゃな」
「あなたは知らないわよね。オオガミは色々とお菓子を作ってくれるの。でも残念ね、部屋を焼くような人にお菓子を出してくれるほどお人好しじゃないもの」
「いや誰もそこまでは」
「そ、そんな……い、急いで部屋を修復してきましょう。大丈夫です。まだ覚えていますので!」
「それは嬉しいけどそうじゃないかなぁ」
オオガミが言葉を挟む暇もなく、走っていってしまうモルガン。
その様子を見てエウリュアレは、
「切り札は無駄にさせないから」
「人の料理を切り札にしないで」
責任が重いよ。と嘆くオオガミに、エウリュアレはにっこり笑いながら、
「久しぶりにあれを食べたいのだけど」
* * *
「な、なんですかこれは……!」
目を見開き、驚愕の表情で固まるモルガン。
その隣で同じものを前にしているエウリュアレが、
「これがオオガミの特製メロンパフェ。滅多に食べられないんだから」
座っているモルガンと同じくらいの高さのメロンパフェを見て、どこから攻めれば良いのかと悩んでいるモルガンを見てエウリュアレは楽しそうに微笑む。
オオガミはモルガンの正面に座りつつ、
「まぁ、滅多に食べられない原因は、昔作りすぎたから目をつけられただけなんだけども。たまに訓練の名目で畑を手伝わされるよ」
「どこで作ってるのよ」
「閻魔亭の裏」
「そんなところに定期的に行かないでほしいのだけど……」
平然に地獄に行っているというオオガミに、困ったような顔をするエウリュアレ。
その顔を見て、オオガミは苦笑しながら、
「まぁ、食べて喜んでくれればそれで十分だから」
「それはそれでしょ。もうちょっとマシな場所を探しなさいな」
そう言いつつ、パフェを食べ始めるエウリュアレ。
モルガンは横からその様子を見て真似るように食べ始めた。
オオガミはその様子を見ながら、嬉しそうに笑うのだった。
よし。モルガンさんはこれで沈静化してくれるはず。沈静化してください。
実際のカルデアは知らないが私のカルデアは甘味が頂点。甘味に勝てる英霊など、味覚がないか甘いのが苦手な相手しかいないのだ。